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恋よりも、命よりも
決意
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なぁリュータン」
そう。
こいつは何故か今日、結婚披露宴やのにドレスじゃなく燕尾服を着ているのだ。
全てはプロポーズした時にリュータンが、
「結婚式は燕尾服でもええ?披露宴はすき焼き屋でもええ??」
と、泣きじゃくりながら聞いてきたのを(可愛いなぁ)と思いつつ
「ええよ!」
と答えてしまった自分の責任ではあるんだが…。

自分の容姿はそれほど不自由ではないと思いつつも、普段着なれてない燕尾服を着こなせる程の器量かと言われるとそれほどの自信もなく、
従って今まで数え切れない程燕尾服を着てきたリュータンの着こなしと比較されると少し…いやかなり…思う所があるのである。

それでも。
結婚して『乙女』という基準から外れてしまった以上、今日からリュータンは『タカラジェンヌ』ではない。
今のところ、俳優業をする予定もなく、だから今後男装をする必要性もなくなってしまうのだ。
事実上、リュータンの男装は、今日が見納めのはず。

実際、リュータンも少し寂しげに微笑みながらこう答えた。
「ありがと。…そやなぁ、この先燕尾を着る予定なんてないんやな…」
「…寂しいか?なんやったら、宝塚で教師の仕事、もらえるよう口利いてもええんやで?」
寂しそうなリュータンを見て、俺は用意していていつ言おうか迷っていた言葉を口にした。

顔にやけどのキズが残ってしまったリュータンには、今後俳優としての道はほとんど残されていない。
しかし、リュータンの今までの功績を考えれば、それくらいの優遇はされても良いのではないかと思う。
実際、エリの旦那の就職口も俺の口添えだけでなく、エリの今までの功績があったからこその話だったのだ。
まぁ、俺としてはもウチょっと新婚生活を満喫したいと思わないわけでもないんやけど。
だから少し、口にするのを躊躇ったりもした。
…が。

「ううん、いらん」

予想を反して、リュータンは首を横に振った。

「…なんでや?宝塚におりたいんやないのか?」
思わずそう訊ねた俺に、リュータンは「未練はないわけじゃないけど」と続けた。
「豪華な衣装も、贅沢な舞台装置も、オーケストラもみ〜んな好きやしできたらもういっぺん『宝塚』の舞台にかかわりたいけど…
ウチが続けたかったのは、『舞台俳優のリュータン』で『教師のリュータン』やないんや。もっと言うと、ファンや後輩の中の『雪組トップのリュータン』であった自分を崩しとうないんや。
…だから、燕尾も今日でお終いでかまへんの」
「…そうか。…それもそうやな、リュータンはずっと『雪組トップ』として皆の心の中に残り続けたらええと俺も思うで」

あくまでも、『主演男役』であった自分にこだわりを見せたリュータンの誇り・矜持に改めて感心しながらしみじみと答えた俺に、今度はリュータンは
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