新たな生活
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戦争は終わった。
…とは言っても、私にとって戦争なんて勝っても負けても既に終わったようなものだった。
そりゃ、空襲があったり、配給が少なくて飢え死にしそうだと感じたり、色々辛い事はあったけど。
清志さんが戻ってきた、それだけでもう、私の『辛い戦争』は殆ど終わったと思う事ができた。
人はいつ死ぬかなんてわからない、
空襲があったってなくたって、明日も生きてるかどうかなんて誰にもわからない。
けど、それでも。
どこかの戦場で、私の知らない場所で、私がわからないうちに死んでしまうのと、
私の見ている場所で、私が傍にいるところで、静かに死んでいくのとは全然意味合いが違う。
私は欲が深いのよ。
生きてるうちも、死んでいくその時も、私の一番のファンであるあの人が、私の傍を離れていくなんて許容できないの。
「この人と結婚する」
父と母にそう宣言した時は、そりゃもの凄い反対を受けた。
「なによ。『宝塚なんて早くやめて、嫁に行け!』って、あんなに言い続けていたくせに」
「それとこれとは話が違う!こんな手に職もない、足すら片方ない若造に、大事な娘を嫁にやる親がどこにいると思っとるんや!」
「清志さんには『画家になる』っていう大きな目標があるわ!私の事、一番きれいに書いてくれるのは彼だもの!それに、彼の足には私がなるの、なんにも困る事なんてない!!」
「やかましい、このスカタン!娘は娘らしく、黙って親の言ったトコに嫁に行けばええんや!お父ちゃん許さへんからな!!」
「別にいいわよ、お父ちゃんたちに許してもらわなくっても立派にやっていけるもの!!
ほな、さいなら!!」
行くわよ清志さん!と、家に入ってモノの数分で、私は清志さんを引きずって家を飛び出してしまった。
今思えば、清志さん
「あ、あのっ、辻清志と申します!えと、今日は、エリさんと、お嬢さんと結婚させていただきたいと」
までしかしゃべらないうちにお父さんに
「ゆるさーん!!」
って言われてから、終始無言だった。
…清志さんらしい。
フフフ、と思い出し笑いをする私に、清志さんは怪訝そうに
「どうしたの?」
と聞いてきた。
「お嬢さんをくださいって、言わなかったのね」
私はちょっと話を逸らしたけど、清志さんはそれには気づかず「ああ」と、とうなずいて
「だって君、モノみたいに扱われるの好きじゃないでしょ」
と言った。
「ください、って言おうかな、なんて言おうかなと思った時『私はモノじゃない!』って言ってる君が目に浮かんだんだ。確かに、君はモノじゃない。僕の大切な『奥さん』だよ。ください…って、モノのように言うんじゃダメだよなぁと思ったんだ」
でもさ〜、と困ったように続けている。
「実際、日本語って不便だと思ったね。じゃあどうご
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