青春の終わり5
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思いはかって動かなあかんねん。そのためには、色んな事をちゃんと覚えておかなあかん!…けどまぁ、あんたらの期は特別や」
そう言って、リュータンさんは少し寂しそうに笑った。
「トモが、いたしな」
「……………………」
「それに、私の次を任せるタッチーもいる」
「そうですね」
「かまぼこもいるやないの」
「…………………………え?」
まさか自分の名前が出るなんて思ってもみなかった私は驚いた。
「あんたらの期は確かにスター候補がたくさんいて、かまぼこは踊りが結構上手いのに、目立てなかったところはある。でもな、かまぼこ、あんたにはあんたの良さがちゃんとあるんやで」
「リュータンさん…」
「確かにあんたの踊りは重かった、けど完璧やった。私の踊りには、…もしかしたらタッチーの踊りにも、あんたの踊りは合わんかもしれん。私もタッチーもバレエから習い始めてるしな。
でも、あんたは『完璧』なんや。それがどんなに重要か、わかるか?」
ほら、もっと肉食わんか、とか言って私のお皿にお肉をのせながら、リュータンさんは言い続けた。
「『かまぼこに後ろ任せておいたら安心や』毎回そう思いながら舞台に立てるんや。
私は天下のリュータンや、自分だけなら完璧や、自信がある。でも、後ろも完璧なら最高やないの!あんたがいるおかげで、お客様にはいつも前も後ろも完璧な舞台を提供する事ができたんやで」
それってすごい事やろ、なぁ?と言われたけど、答える事が出来なかった。
涙が出てきた。
口をあけても、嗚咽しか出そうにない。…返事なんかできそうにない。
「………っ、リュっ、…タンさん、わたしっ」
「なに泣いてんの、しゃきっとしぃ。…あんたかて、次の娘役トップ候補なんやで」
わたるさんに聞いたんやけどな、と、影山先生とタッチーの方を見ながらリュータンさんは続けた。
「どうも次の娘役トップ、もめてるみたいやな。…あんたらよりも下級生は戦争で、どうも上手い事育ちきれてないし。あんたらの期も、まだ戻ってこれるかどうかわからん生徒も多い。なにより、タッチーに合いそうなのがどんなタイプかがわからんみたいやな、戦時中でロクに公演もできへんかったし」
「……」
「それでもタッチーは決定や、他に人気のあるジェンヌはエリくらいやったけど、既に退団してるし、なによりこのリュータンが認めてるんやしな!…まぁ、しばらくは娘役トップは何人かで回しながら、という事になるんやろうな」
だから、しゃきっとせなあかん。
「それに私かて、今日は一つの『区切り』の日や」
「…え?」
「『くーぎーり!』嶺野白雪も、リュータンも永遠や!…でも、もう『タカラジェンヌ』ではない。
わたるさんと結婚したしな。乙女ではなくなったなぁ?」
ニヤニヤ笑って首をかしげたリュ
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