青春の終わり
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女の人達はそう言って泣きながら走り去ったけど、リュータンさんはもうそっちなんか一瞥もしないで、私達の方に歩み寄ってきた。
「あ…」
「ウチの組の者が、大変失礼いたしました。全て、この雪組トップ嶺野白雪の監督不行き届きです。大変申し訳ございません」
「…いえ、こちらこそ、道をさえぎってしまってすいませんでした」
「お客様が謝る事なんてないんです。今日の公演、前の方でご覧になっていただいてましたよね?お二人とも、本当に真剣に観ていただいていたので、わたくしも身の引き締まる思いで演じさせていただいていたんです。それなのに…不快な思いをさせてしまって、申し訳ございませんでした。」
「!私達が見えていたんですか?」
「全てのお客様のお顔を確認するわけではないですが、印象的な方は記憶に残ります。いつも最善の演技を、と心がけてはおりますが、今日は特に身の引き締まる思いでしたよ」
にっこり笑って話すリュータンさんのおかげで、もう私は悔しくも悲しくもなくなっていた。
だって!リュータンさんが、あの夢の世界の人が、夢の世界の中で、私を見ていてくださったんだもの!!
「あ、あの!!」
「何でしょう」
「あの、今日は、本当に楽しかったです!!すごく、凄く素敵で、お父ちゃんと二人で、まるで夢の世界だねって、さっきも言っていたんです。私、私絶対また来ます!何度でもきます!!」
言いたい事の半分も言えなかったけど、とにかく感動して、また来たい、それだけが伝えられればと思った。もしかしたら所々声が裏返って上手く聞き取れなかったかも。
それでもリュータンさんは
「ありがとうございます。ぜひまたお越しください。お二方のお越しをお待ちしております」
そう言って、にっこり笑ってくださったんだ。
だから、私はリュータンさんが好き。
いつだって、今だって「タカラジェンヌの嶺野白雪」は永遠だと、そう思う。
私の心の中には、いつもあの日「待っている」と言ってくださったリュータンさんがいる。
今は、目の前に幸せに笑う燕尾服のリュータンさんがいる。
私の「タカラジェンヌ」は、リュータンさん、その存在そのものの事なんだ。
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