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恋よりも、命よりも
秋の良き日
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る。
なんだか懐かしくて、嬉しくて笑ってしまう。

「元気そうやな」
私と同じく、ちょっと遠巻きにしてリュータンさん達を眺めていた影山先生が、ぽそっと言った。
「元気ですよ」
視線はずらすことなく、私も答える。
「元気に、なりました」
「…トモが死んで、エリが退団して、中尉が死んで、リュータンが退団して。お前にとっては、辛い事ばかりだったろうから、これでも少しは心配してたんやで。
…まぁ、俺が心配できる立場やないのはわかってるし、俺はもう好いとる女もいるし?…それでも一応、親戚の兄ちゃんとか、そん位の気持ちでお前の事は心配や。宝塚に入れたのは俺やしな。
…元気なら、良かった。俺に言えるんはそれだけや」
影山先生は、そんな事をごにょごにょ呟いている。

この人も相変わらずだ。
舞台の事ではものすごく厳しいし、自分の素行は悪いクセにタカラジェンヌには「タカラジェンヌとは何たるか」を力説する。一見「自分に優しく他人に厳しい」人に思える。
でも、実際は。
タカラジェンヌを、厳しい世間の目から守るためにどれだけ尽力してくださっているか。
優しい事は言わないけれど、身の内に入れた者を守ろうと、陰で必死に努力してくださっている。
不器用な人なのだ。
「・・・ありがとうございます」
いつも、守ってくださって。
心をこめて言うと、彼はすこし気恥しそうに「おう」と笑った。
私も、笑えた。

ところで。
「先生?なんでリュータンさん燕尾服なんです?すきやき屋さんで披露宴、てのも珍しいなぁと思ったんですけど」
「…言うな。まさか本気やとは思わなかったんや。本気にするとは…」
「??」
「いいんや、幸せなんやから!!ほっとけ!!」

そんな、秋の良き日。
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