第五十五話 演奏その十
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「もっともっと打って」
「今チーム打率二割九分よね」
琴乃はチーム打率も口にした。
「チーム本塁打も打点も十二球団トップで」
「ええ、そうよ」
尚チーム防御率もトップだ、まさに無敵である。
「打ってくれてるのよ」
「来年もそうだったら」
「いいのにね」
「本当に」
「あの時は」
八十五年はというと。
「すぐに打てなくなって」
「掛布さんがデッドボールを受けて」
その結果だった、不動の四番が。
「それからずるずるっていって」
「暗黒時代になったから」
「だからね」
「今度こそは」
黄金時代が続いて欲しいというのだ、このことは五人だけでなく全阪神ファンが願っていることだと言っていい。
「連覇よ、連覇」
「そうそう」
景子は琴乃の言葉に確かな声で頷く。
「もう絶対にね」
「ここまできたらね」
「阪神でもよ」
「連覇していいからね」
「ライオンに出来たのよ」
ここで白猫だの言わないところが阪神ファンだ、阪神ファンは巨人以外のチームには寛容な心を持っているのだ。
「虎にだってね」
「そういえば実際虎とライオンどっちが強いの?」
彩夏はここでふとこのことに考えを及ばさせた。
「そもそも」
「虎らしいわ」
里香が答えてきた。
「ライオンと虎よね」
「そう、実際のところね」
「それなら虎らしいわ」
こう彩夏に話す。
「ライオンよりずっと体重があるのよ」
「つまり虎の方が大きいのね」
「実はね」
「ふうん、そうだったの」
「しかも阪神の虎はね」
虎といっても様々な種類がある、阪神の虎はというと。
「チョウセントラだから」
「ああ、阪神が出来た頃まだあの半島日本だったからな」
美優もここで言う。
「あの頃は日本にも虎がいたんだな」
「それでチョウセントラみたいに強くなれっていう思いからね」
「その虎になったんだな」
「そうなの、チョウセントラにね」
今は野生のチョウセントラは絶滅したと言われている、三十八度線の辺りや北朝鮮にはまだいるのではという希望があるが絶望的だという説が強い。
「なったのよ。それでチョウセントラは」
「大きいの?」
「虎の中でも」
「アムールトラ、シベリアの方の虎の亜種で」
里香は四人にこのことから話す。
「アムールトラは虎の中でも特に大きいから」
「寒い場所にいるからよね」
ここで言ったのは景子だった。
「動物って寒い場所にいると身体が大きくなるのよね」
「そうなの、だからね」
アムールトラ、そしてその亜種であるチョウセントラもだというのだ。
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