第一章
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「監督は凄くいい人ですよ」
当時南海のエースだった江本猛起は今でもこう言う。江本は東映にテスト生として入った。だがその短気でプライドの高い気性が災いし追い出されている。その彼を拾ったのが野村であった。
「わしがキャッチャーやって御前が投げる。それで十五勝や」
江本はその言葉が嬉しかった。今まで自分をそこまで高く評価してくれた者なぞいなかったのだ。
「高い評価やない。正当な評価や」
野村は照れ臭そうにそう言った。実は恥ずかしがり屋でもあるのだ。
その野村が育て上げた南海はかってのスター集団ではなかった。他のチームから流れ着いた者やまだ若い者の多い野村を核とするチームであった。阪急とは無論比べものにならなかった。
だが前期南海は好スタートをきった。野村がリードする投手力でもってダッシュをかけあっという間に優勝を決めた。まず野村は宙を舞った。
「あとは後期やな」
しかしここで阪急が地力を見せた。
何と七割近い勝率でペナントを制したのだ。やはりチーム力が違った。西本は笑顔で宙を舞った。
「これで優勝やないのが変な気持ちやな」
彼は胴上げのあとでこう言った。
「まあプレーオフで勝てばええだけやな」
自信はあった。相手は南海である。やはり戦力に大きな差があった。
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