第八十七話 スフィンクスの問い掛けその五
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「そうなんだ」
「絶対とは言えないけれどな」
「気をつけてね」
「お父さんの家系も結構そうした人がいる」
「お母さんのところもね」
よく言われていることだがこうしたことも遺伝だという。そして遺伝には逆らうことは難しいということになる。
「植毛にしてもな」
「考えておくのよ」
「僕まだ十七だけれど」
「流石に今は来ないがな」
「将来の話よ」
だがそれでもだというのだ。
「本当に来るからな」
「髪の毛のことはね」
「下手をすれば二十五を超えると」
「二十過ぎてくる人もいるわよ」
これは実際だから恐ろしい。
母はここでだ、世界の誰もが知っている人の名前を出した。
「イギリスの王子様」
「ウィリアム王子か」
「あの人三十前からだったでしょ」
「そうだったな」
「折角顔はいいのに」
母親譲りの美男子だ、しかも背が高く如何にも女性にもてそうな外見なのだ。ただある部分を除いてはとなるのだ。
「髪の毛がね」
「あの本当に一気にきたな」
「ごそっといったでしょ」
「あっという間にな」
二十代の頃にだ、父も真剣な顔で母に応えている。
「おや、と思ったらな」
「髪の毛が薄くなって細くなっていって」
「今になったな」
「凄い勢いだったでしょ」
「あの若さでああなるとな」
「だからお子さんが生まれてもね」
祝福すべきことだ、しかしなのだ。
「自分より髪の毛があるなんて言って」
「笑えることは笑えるがな」
自分の身を切ったジョークだ、イギリス人らしいブラックさも含んだジョークだがそのジョークもまた、というのだ。
「その根拠になっているからな」
「十代の頃はふさふさだったでしょ」
「お母さんみたいにな」
そうだったのだ、しかしそれがだったのだ。
「今じゃな」
「多分弟さんもね」
「ヘンリー王子もか」
「あの人も来るわよ」
髪の毛が、というのだ。
「そういう感じだから」
「あの人の方がお父さんに似てるからな」
「そうなのよね、ウィリアム王子はお母さん似でね」
ヘンリー王子は父親似である、このことについても一時期色々言われていた。誰がどう見ても父親似であるが。
「だからね」
「そもそもあれは父親からか?」
「お母さんの家系もそうみたいよ」
「成程な、両方の家系か」
「それでなのよ」
ウィリアム王子は、というのだ。
「一気にきたのよ」
「薄毛ならまだいいがな」
「あの人はね」
最早薄毛とフォロー出来る状況は越えていた、ルビコン河を渡っているのだ。
「王室のお金で育毛とか出来ないのかしら」
「それ位はあっちの人達も許してくれるだろうにな」
「ええ、流石にね」
自国の未来の王の髪の毛のことだからだ。
「そう出来ないのかしら」
「そうだな」
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