第八十七話 スフィンクスの問い掛けその四
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「横浜の監督みたいだね」
「ああ、あの人な」
「山下さんね」
両親は大ちゃんと横浜の監督という二つのキーワードを聞いてすぐに察した、そのうえでこう答えたのだった。
「性格はいいけれどな」
「何か違うのよね」
「凄くいい人とは聞いているぞ」
「怒ったことは本当に僅かだってね」
このことは有名だ、山下大輔の性格について悪く言う者はいない。
「現役時代に投手陣に不満を言った後輩を怒鳴ったことがあったらしいがな」
「あっ、そうなんだ」
「そうだ、こっちが打っても打たれたらどうにもならないって言ってな」
「それで山下さんが怒ったんだ」
「投手陣も頑張ってるからそんなことを言うなってな」
「ううん、投手陣を庇ったんだね」
「しかもそれでチームの和を保ったんだ」
そうしたというのだ、山下の人格だからこそ出来たことだ。
「あの人はそういう人だ」
「あんなにいい人はそうそういないわ」
「出来れば大樹もな」
「ああした人になって欲しいわ」
両親は山下については暖かい笑顔で話す。
「人の悪口は言わない、怒らない」
「いつも優しい人でいて欲しいわ」
「そうなんだ」
「確かに監督としてはどうか、だったけれどな」
「チーム事情もあったけれど」
この辺りは仕方がない、横浜ベイスターズのチーム事情は長い間相当に悪い。しかし監督の責任もない訳ではないというのだ。
「采配もおかしなところがあったな」
「今一つね」
「まあそうしたところも置いておいてな」
「いい人であることは確かよ」
「だから大樹もな」
「ああいう人になるのよ」
「うん、ただね」
上城は両親の言葉に頷きはした、だが。
右手で自分の頭を撫でてこんなことを言った。
「髪の毛はね」
「ああ、そのことはな」
「言わないでおいてあげてね」
「本人さんの責任じゃないからな」
「仕方ないのよ」
「髪の毛のことはだね」
あえて言うまでもないことだ、むしろ言ってはいけないことだ。
「それは皆どうなるかわからないからな」
「女の人もなるのよ」
「えっ、そうなんだ」
女の人もくると聞いてだ、上城は驚いて言った。
「女の人もなるんだ」
「なるわよ、怖いでしょ」
「うん、男の人だけじゃないんだ」
「髪の毛は長い友達でいないと」
どうしても駄目だというのだ、母もこのことについては切実な顔である。
「お母さんだって最近ね」
「えっ、お母さんも?」
「実は抜け毛がね」
少し苦笑いになってだ、母は息子に話すのだった。
「最近あって」
「お父さんもだ」
「二人共!?」
「そうなのよ、実は」
「気にしているんだがな」
二人はタレント候補のことを話す時とはまた違う深刻さを見せていた、その顔を見てそのうえで息子に話すのだった
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