第三章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後
第三章
それをセンター前に弾かれる。大島がかえり二点差となった。
「これはいかんな」
根本はそう言ってマウンドへ向かった。そして言った。
「ピッチャー交代」
次の投手は左腕の下柳剛であった。池田はトボトボとマウンドを降りた。
「結局俺は何だったんだ・・・・・・」
ベンチに戻ってもそういう思いだった。
「どうせなら最後まで投げさせて欲しいな」
彼にもストッパーとしての意地があった。だがそれをここで言っても何にもならなかった。
「ランナーも残しちまった」
その責任があった。
「こうなったら最後まで見なくちゃいけない」
そしてグラウンドに視線をやった。
下柳である。打席には中根仁がいる。
彼は守備がいいことで知られていた。そして彼にはもう一つ得意なものがあった。
それは左投手の攻略である。彼は左殺しとしても有名だったのだ。
下柳は先に書いたように左である。根本はそれをわかっていたのだろうか。
「よし!」
中根がバットを振った。それはセンター前に転がった。これで無死一、二塁である。
「おい、まさかしたら」
それを見て近鉄ファン達が元気を取り戻してきた。
「ああ、ひょっとしたらな」
逆転、それが脳裏をよぎった。
だが一番の大石、二番の水口栄二は凡打に終わった。あと一人で終わりである。
「終わりかな」
だが打席にはラルフ=ブライアントがある。当たれば大ホームラン間違いなしの男だ。
しかし三振もまた異常に多い。それが彼の弱点であった。
「しかしここで一発があればそれで終わりだ」
そう思った根本は彼を敬遠した。それは止むを得ないことであった。
打者一巡である。次に打席に立つのは石井だ。
違った。彼はこの時代走を出されていたのだ。
「というと」
この場合打席に立つのは内匠政博だ。足はともかくその打力は石井とは比較にならない。
「終わったかな・・・・・・」
「まあ所詮こんなもんや」
近鉄ファンはそう言って苦笑した。だが普通こうした場合には代打がある。近鉄にはまだそれがあった。
「代打、山下」
コールが告げられる。そして山下和彦がバッターボックスに入る。
彼は普段はこれといって目立たない捕手であった。だがいざという時にはとんでもないものを放つことで知られていた。所謂意外性の男であった。
その彼が打席に入った。観客達は不安と期待が入り混じった目で彼を見ていた。
「どうなる・・・・・・!?」
ゴクリ、と喉を鳴らす。下柳は彼に対して投げた。
「今や!」
それは絶好球であった。山下はそれを振った。打球はセンター前に抜けた。
「よし!」
まずは安達がかえる。そして中根が。これで同点である。
「まさかふりだしに戻るやなんて」
観客達
[8]前話 [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ