第二章
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第二章
「今俺ですか!?」
彼はこの時ストッパーを務めていた。だがこの点差では出番がない。そう思ってこの日はピッチングをしていない。
ブルペンで投げている投手は他にいる。何故自分なのか。
「あの、監督が本当にそう仰ったんですか!?」
彼はブルペンコーチに対して尋ねた。
「ああ、間違いない」
ブルペンコーチも半信半疑であった。
「悪いがすぐに行ってくれ。まあ今日の試合なら勝てるさ。心配するな」
「はあ」
バスタオルすらカバンの中だ。とりあえずはスパイクに履き替えブルペンで急いで何球か投げた。そしてマウンドに向かった。
「おいおい、本当に池田が出て来たぞ」
近鉄ファンも信じられないといった顔であった。
「今日はどう見てもあちらの勝ちだろうに」
だが根本は何も言わない。ただマウンドで投球する池田を見ていた。
「こんな点差じゃセーブもつかないだろうに」
彼はそうした声を聞いていた。自分も同じ考えだ。
「本当に俺なのかな」
そういう思いが消えない。心にも余裕がなくなっていた。
「おい」
それを見た近鉄ナインは池田のボールにあるものを感じていた。
「何かいつもとちゃうな」
最初に言ったのは石井だった。四番を任されているだけあってボールを見抜く目は大したものだ。
「そういえばストライクの幅が小さいな」
切り込み隊長の大石大二郎も見ていた。彼は打撃にも定評があった。
「それにボールも走っていない。今日の池田は打てるかもな」
皆それを見て囁いていた。だが流石にそれは池田の耳には入らなかった。
「よし」
ナインは頷いた。
「思いきっていくか。どのみち今日はこれで最後だ」
「ああ」
そして代打大島公一が打席に入った。
「早く終わらせよう」
池田はそのことだけを考えていた。代打が出たことは忘れていた。
この時近鉄の七番はサードの金村義明であった。だが彼は一回の守備で右膝を痛め退場していた。そのあとに守備の上手い吉田剛が入っていたのだ。
「吉田か」
彼はそこにいるは吉田だと思い込んでいた。そして投げた。
大島は打った。それは鈴木のものと同じく左中間のツーベースとなった。
「しまった」
池田は舌打ちしてスコアボードに顔を向けた。その時にルイベース上にいる大島が目に入った。
「えっ!?」
その時はじめて大島のことに気付いた。そういえば。
「左にいたな」
大島は左バッターである。それに対して吉田は右である。
それに背丈も違っていた。大島は吉田よりも小柄である。何故それに気付かなかったのか。
「何故気付かない・・・・・・」
池田は自分を恨めしく思った。それが余計にピッチングを余裕のないものにした。
だが後四点もある。安全といえば安全だ。彼はとりあ
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