第五話、地球へ
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けの毎日だった。食事も睡眠も録にとらず、体が病に蝕まれるまでに、私は研究しかしていなかった。全てはアリシアを蘇らせるため。そのためなら、リニスやフェイトを捨て駒にすることまで考えたこともあった。
けど、あの子がうちに来てから、私は大幅に変わった。というより、彼に変えられた。
まずはフェイトとの関係。研究ばかりでまったく相手にしていなかったもう一人の娘との和解。それから、生活全般。私の病気。それに、アリシアのことも、ラウルは引き受けてくれた。
最初はギスギスしていたフェイトとの関係も、ラウルが仲を取り持ってくれた。インスタントしか食べてなかった家族全ての食事を、ラウルは作ってくれた。私が病を患っていることも考慮した献立になっていたのを知ったのは、ラウルに料理を教わったときだった。
私がこれまで研究だけにつぎ込んでいた、アリシアを蘇らせるただそれだけのために全てを無意味としてあしらっていた私の世界に、ラウルは一つ一つ意味を与えてくれた。灰色だった世界に、ラウルが色をつけてくれた。
本当に、感謝してもしきれないほどの恩が彼にある。今の生活は、全てラウルが私たちに与えてくれたものだ。
でも、私はラウルにはなにもしてやれていない。恩を受けるだけ受けて、未だ一切返せないでいる。いつか返したい、そんな気持ちが、ここ最近、私の中にずっと溜まっていた。
「私がラウルにできること、なにかないのかしら……」
「俺が、なんだ?」
「え!?」
不意にドアのほうからラウルの声が聞こえてきて、私は危うく持っていた食器を落としそうになった。
「おい、大丈夫か?」
「え、ええ。大丈夫よ」
考えてた人が急に現れて驚いている私を他所に、ラウルはひょいと私の手から食器を取った。
「食器は俺が並べとくから、プレシアはご飯よそってきてくれ」
「あ、ええ…分かったわ」
素早く、かつ丁寧に食器を並べていくラウルの姿を見て、私は笑みを浮かべながら炊飯器のふたを開けた。
「もう体調はいいのかしら?」
「ああ、お陰様でな。まだ多少頭痛が残っているが、その内痛みは引くさ」
その言葉に安堵して、軽く溜息をつく。脳裏にあの時のアルフの言葉が浮かんできて頬に熱を感じた。
「お母さん、か……」
「ん?なにか言ったか?」
きょとん、として問いかけてくるラウルを見つめて、私は笑った。
「なんでもないわ」
「え?」
そして、私は自然にラウルの頭を撫でていた。いつもならツンツン立っているはずだが、今は寝癖で寝ている青の髪に指を絡めながら、くしゃくしゃと撫でる。
「ありがとう…」
私の思いが分かったのかどうかは知らないけれど、ラウルは一瞬虚をつかれたような顔をしてから、笑顔を浮かべた。いつもどち
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