第百五十三話 雲霞の如くその十
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「それじゃ」
「走りながら攻めて来るので弓矢や鉄砲は使って来ませぬ」
どちらも止まって撃つのが基本だ、馬に乗って放つやり方もあるが歩いて走って行うには困難なものがある。
それでだ、信長は佐々にこう言うのだ、
「そう思うと楽じゃな」
「では」
「我等が使う」
逆だ、織田軍がだというのだ。
「鉄砲を放ちじゃ」
「弓矢もですな」
「鉄砲を放ちその次に弓矢を放つ」
そうして二段でだというのだ。
「よいな、鉄砲を放ち次の鉄砲を放つ間にじゃ」
「弓矢を続いてですな」
「放つ」
まさにだ、そうすえるというのだ。
「わかったな」
「では」
「あの者達が幾ら動きがよかろうとも」
それでもだというのだ。
「あの者達は具足を着けておらぬ」
「守りは弱いですな」
「そこが狙い目じゃ」
まさにというのだ。
「守りの弱さをな」
「鉄砲や弓矢で」
「攻めますか」
「奴等は攻めれば強い」
まさにというのだ、その武具や動きのよさから。
「しかし具足も兜も着けておらぬ」
「だからですな」
「攻めよ」
守りつつそうしてだというのだ。
「ではよいな」
「さすれば」
佐々も応えそうしてだった。
彼等は攻めるその闇の服の者達に鉄砲や弓矢で攻めた、それはかなり効いた。
それでだ、彼等は。
鉄砲に撃たれ弓矢で撃たれた、だがこれで怯まずに。
次から次に来る、信長はそれを見て言う。
「鉄砲、弓矢にじゃ」
「それと共にですな」
「さらに」
「槍じゃ」
それも使えとだ、諸将達に命じる。
「長槍を出せ、しかし今は叩くよりもな」
「前に出してですな」
前野が応える。
「そうして奴等を来させぬのですな」
「突け」
まさにそうしろというのだ。
「その腹をな」
「わかりました」
「無論叩くこともせよ」
槍本来のこのやり方も忘れない。
「とにかく連中を近付けるな」
「そして鉄砲と弓矢を撃ち続ける」
「そうしますか」
「その通りじゃ、とにかく近付けぬことじゃ」
攻めて来る彼等を決してだというのだ。
「よいな」
「はい、さすれば」
「今は」
「そうせよ」
こうしてだった、槍が前に出されて。
門徒達を進ませない、そして進めない彼等にだった。
信長は鉄砲と弓矢も撃たせ続けた、それで迫る門徒の大軍を防いでいた。
それを見てだった、遂に。
門徒、灰色の服の彼等の間に動揺が及んだ。彼等は自分達の前での戦を見てそれでこうそれぞれ言うのだった。
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