第百五十三話 雲霞の如くその九
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「これでは」
「そうじゃな」
「まことに何者でしょうか」
「一向宗の者達で積極的に来るのはあ奴等じゃ」
灰色の服の者達はすぐに降り村に戻る、彼等は根っからの百姓なのだ。
しかしその彼等はだ、どうかというと。
「老若男女向かって来る」
「しかも武器も動きもいいですな」
「動きは忍のそれに近い」
「足軽のものでもありませぬ」
「尚且つ来る時は昼も夜も来る」
「まことに不思議な者達ですな」
「全く」
こう話す彼等だった、考えれば考える程だった。
それでだ、こうも話す彼等だった。
「考えれば考えるだけわからぬな」
「まことに」
「あの者達は本当にな」
「謎に満ちております」
「一向宗の者達だと思うが」
それでもだという話はだ、そうしてだった。
そうした話をしながら彼等は今はだった、目の前の敵に向かうことが先決だった。
その者達が来る、それでだった。
信長はその松井にこう言うのだった。
「この話はよい、ではな」
「はい、それでは」
「来る、ならばな」
「それを受けてからですな」
「攻めよ」
まさにだ、そうしろというのだ。
「その時にな」
「それでは」
松井も信長の言葉に頷く、政を得意とする彼だが戦の場でも信長の傍らにいて仕事をしているのだ。そうして。
織田家の軍勢は今は受けていた、だが。
その彼等を見てだ、こう言う一向宗の者達だった。
「攻めて来ぬな」
「うむ、そうじゃな」
「何を考えておる」
「織田家は攻めて来ぬのか」
「何か気になるのう」
「そうじゃな」
戦を知らない彼等だが本能的に何かを察していた、それでだった。
彼等は迂闊に攻めようとしなかった、それは僧侶達もだった。
気になる顔でだ、こう言うのだ。
「仕掛けて来るな」
「織田信長だからのう」
「だから今もな」
「何をしてくるかわからんぞ」
こう言って灰色の本願寺本来の者達は動かなかった、だが。
闇の服の者達は違った、まるで恐れなぞ知らないかの様に織田家の陣に向かい。
そのうえでだ、こう言うのだった。
「攻めよ!油断するな!」
「よいな、それではな!」
「行くぞ!」
「このままな!」
こう叫んでそしてだった、彼等は。
そのまま攻める、その攻めはかなり激しい。
しかし信長はその激しい攻めをあえて前に出て見つつ言うのだった。
「軍勢の動きではないな」
「はい、今も」
佐々が信長のその言葉に応えて言う。
「長島でも近江でもでしたが」
「忍の動きに近い」
「全くですな」
「ここはどうするか」
ここでだ、信長はこの答えを出した。
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