第百五十三話 雲霞の如くその八
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「多くの兵糧を集めておるのですな」
「足らなければ持って来させる」
そして兵達を餓えさせぬというのだ。
「たらふく食って戦ってもらう」
「では今も」
「飯の時じゃな」
「はい」
「皆食え」
兵達もだというのだ。
「思う存分な、そのうえでじゃ」
「戦うのですな」
「敵が来た時に」
「守りを固めてな」
今はそうしてだった、彼等は本願寺の大軍を攻めることなく今は陣を整えて守るだけだった、やがて本願寺の大軍がお互いに合流した。
合わせて二十二万になった、それを見た門徒達を率いる本願寺の僧侶達はこの途方もない数の門徒達を見て言うのだった。
「これだけの数があればな」
「うむ、勝てるぞ」
「如何に織田の軍勢の武具がよくともな」
「織田信長の頭が切れようとも」
既に信長が切れ者であることは彼等も認めていた、むしろ民達こそが信長の本質を素直に感じ取っていた、その政に直に触れるからだ。
それ故にだ、彼等を率いる僧侶達も言うのだ。
「決してな」
「何があろうとも」
「これだけの数があればな」
「織田信長を倒せるぞ」
「必ず」
こう話してそしてだった、彼等は。
その圧倒的な数で攻める、しかしそれは数だけで攻めるやり方だった。
門徒達はその多くが灰色の服を着ており旗も灰色だ、その彼等が。
ただひたすら攻めるだけだった、その彼等を見てだった。
信長は厳しい顔でこう言うのだった。
「来たな、ではじゃ」
「はい、それではですな」
「我等はこのまま」
「攻めるな」
それは絶対にだというのだ。
「防げ、また門徒達に今も言え」
「戦を止め村に帰るのなら命は取らぬ」
「そうですな」
「そうじゃ、今も言うのじゃ」
この戦いでもだというのだ。
「わかったな」
「そうですな、それで無駄な血は流れませぬ」
「それに越したことはありませぬな」
「だからじゃ」
それでだと言う信長だった、しかし見れば灰色の者達は念仏を唱えていても無意識のうちに命を惜しがるのか前に出ない、出て来るのはここでもだった。
闇の色の服の者達だった、信長はその者達を見てまた言った。
「またか」
「あの者達は何でありましょうか」
松井もこう言って首を捻る。
「一体全体」
「一向宗であろうな」
まだだ、信長はこう考えていた。
「いつもおるからな」
「しかし長島で坊主達は」
知らないと言っていた、このことは松井も知っている。
だがそれでもだ、松井はこう言うのだった。
「知らないと言っておりますし」
「それが気になるのう」
「ですが常にいますな」
一向宗の者達のいる場所にだ。
「徳川殿からも文が来ておりましたな」
「竹千代は勝った」
だが、というのだ。
「しかしじゃ」
「
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