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戦国異伝
第百五十三話 雲霞の如くその七
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「やるぞ」
「敵の数はかなりですな」
 佐久間が言う、だがその顔は笑みになっている。
「二十二万です」
「対する我等は十五万じゃ」
「数では負けておりますな」
 しかしだった、佐久間の顔は笑みのままである。
 そしてその笑みでだ、こう言うのだ。
「ですがそれでも」
「桶狭間の時と比べてどうじゃ」
「ははは、あの時はまさかと思いました」
 あの時織田の兵は一万五千、今川は二万五千だった。しかもそのうちの一万三千をあえて美濃との堺に向かわせて清洲城はほぼ空だった。
 しかしそこでだ、信長は雨が降ることを見越して今川を桶狭間で破ったのだ。その時のことから言うのだった。
「あの時を思えば」
「大した相手ではありませぬな」
「うむ、向こうには竹千代もおったしのう」
「全くです」
 佐久間重盛も言う、その時砦で家康と戦った彼が。
「あの時は今より遥かに危うかったです」
「その時を思えばな」
「今は安心出来ます」
 例え二十二万の大軍が相手でもだというのだ。
「勝てます」
「そうじゃ、安心して備えてじゃ」
「そpのうえで、ですな」
「迎え撃ち勝つのじゃ」
 後の先、それを狙ってだというのだ。
「よいな、今は待つぞ」
「はい、それでは」
「今は」
「具足や武具は備えておくのじゃ」
 不足や不備はあってはならないというのだ。
「よいな」
「はい、では」
「そのことも」
「飯もしっかりと食っておけ」
 このことも忘れない、腹が減ってはだ。
「皆たらふくな」
「では白い飯をですな」
「皆に食わせてやれ」
 干し飯ではなくそれを用意せよというのだ。
「おかずもかんぴょう等ではなく魚に野菜を出してやれ、漬物もな」 
「畏まりました」
「よいものを食わねばな」
 それは足軽一人に至るまでだというのだ。
「さもないと満足に戦えぬ」
「ただ腹が減っては、ではありませぬな」
「そうじゃ、猿はその辺りがよくわかっておるな」
 今度は羽柴が応えた、信長はその羽柴に顔を向けて答えた。
「しかもいい飯でなければな」
「兵は動きませぬな」
「それは百姓達もじゃ」
 兵達だけでなくというのだ。
「やはりよいものをたらふく食わねばな」
「満足に働きませぬな」
「だから民達には思う存分食ってもらっておるのじゃ」
 これも信長のやり方だ、彼は民百姓にはたらふく食ってもらいそのうえで働いてもらっているのだ。その為年貢も軽いのだ。
「それでこそよい国が出来てじゃ」
「よい軍にもなりますな」
「織田の兵は確かに弱い」
 このことは信長が最もよくわかっていることだ、織田の兵は数は多いがかなり弱い。武田や上杉の兵とは比べものにもならない。 
 だが、だ。よい飯がたらふくあればというのだ。
「しかし
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