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八条学園怪異譚
第五十六話 鼠の穴その六
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「大柄な人だったけれどね」
「確か一八〇近くあったのよね」
「大久保さんもね」
 尚当時の日本人の平均身長は一五四程度だった、成人男子でこれ位だった。
「無茶苦茶大きいわよね」
「当時から見たらね」
「まさに天を衝かんばかりだったよ」
 当時から見ればそこまでだったというのだ。
「わし都に遊びに行って見てびっくりしたから」
「薩摩って豚肉食べてたからね」
 愛実は家の食堂のメニューの中で一番得意なものはトンカツだ、それで豚肉のことについてはかなり詳しくこのことも知っているのだ。
「動物性タンパク質は身体を大きくしてくれるのよね」
「そのせいだったのかな、西郷さん達が大きかったの」
「そうじゃないの?」
 当時としてはかなり大柄だったのは、というのだ。
「あの人達が大きかったのは」
「あと武市半平太も大きかったのよね」
 この土佐の志士については聖花が話す。
「やっぱり一八〇位あったのよ」
「鰹のせい?」
 愛実は今度はこの食材を話に出した。
「土佐っていうと」
「鰹食べたら大きくなるの?」
「どうかしら」
 愛実は首を傾げさせて聖花の問いに返した。
「お魚はね、食べても」
「お肉程じゃないわよね」
「そうよね」
「それでも大きくなる人は大きくなるのね」
「そうよね」
 こう話すのだった、二人で。そして愛実はここでまた自分のことを話した。
「私なんかお肉もお魚も食べて牛乳も飲んでるのにね」
「小さいっていうのね」
「あと五センチ欲しいけれど」
 百五十五からだ。
「もっとね、けれどね」
「ううん、努力したら大きくなるんじゃ」
「高校に入ったから無理なんじゃないかしら」
 自分でこう言う愛実だった、女の子の場合高校に入るともう成長期が終わってしまうことが多い、胸はともかく背はだ。
「これ以上は」
「胸は大きくなってない?」
 聖花は愛実のその胸を見て言った、冬の制服の上からでもその大きさははっきりと出ている。見事なものだ。
「何か」
「えっ、そうかしら」
「そう思うけれど」
 こう言うのだった、聖花は言いながら自分の胸を見ている。
「私はね」
「聖花ちゃんウエストくびれてるし脚だって」
 愛実は愛実で聖花のそうしたところを見つつ返す。
「いいじゃない」
「そう?」
「そうよ、モデルさんみたいよ」
 愛実から見たらそうなる、聖花のスタイルは。
「だからいいんじゃないの?」
「そう?もう少し胸が欲しいけれど」
「充分よ、それだけあったら」
 胸にしてもだとだ、二人で話すのだった。そして鉄鼠はその二人に対してこう言ってきた。
「とにかく今夜ね」
「今夜ね」
「集まる場所は何処なの?」
「動物園の前だね、門は鍵がかかってるから」
 夜にはそうなるから
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