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乱世の確率事象改変
内なる覇を雛は見つめる
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煮詰めておく為だろう。それに鈴々の場合は先の展開に頭を向けさせるよりも目の前の戦に集中させていった方が断然いい。

「いえ、朱里ちゃんからではあったんですが……水鏡塾時代の友達の手紙についてでした。その子の名前は徐元直。今は荊州の劉表さんの元に士官しているとの事です」

 俺の予想に対して、雛里の返答は違うモノだった。しかしすぐに思考が先へと繋がる。

――徐庶か。間違いなく優秀な人材だろう。雛里や朱里と友達って事は劉表と俺達の間に有力な繋ぎ役が出来たと考えていい。

 そのまま先の展開まで積み立てようとしたが……突如、俺の目の前にすっと湯気の立ったお茶が差し出される。驚いてその方を見やると月がふにゃりと微笑みを向けてくれた。

「お茶を飲んで皆でゆっくり考えましょう。雛里ちゃんもまだ全てを話していませんから」

 同時に、驚いた俺を見てか詠と雛里にクスクスと可愛らしく笑われてしまう。そんな三人からの暖かさが心に染み入る。微笑み返してお茶を受け取り、

「ありがとう、月」

 礼を口にして一口啜る。うん、おいしい。思考に余裕が出来た所で雛里に続きを促す為に一つ頷いた。雛里も頷き返し、続きをゆっくりと話し出してくれる。

「元直ちゃんが西南の地に関する情報をくれたんです。荊州は州牧が病床に伏し、後継の引継ぎで問題発生。内部での対立が目立って先が読めず、さらには孫策軍から攻め入られる動きがあり窮地に立たされるかもしれないとのことです。ただ……秘密の隠し玉があるので問題は無いだろうとも言っていました。後は益州の様子も似たようなモノで、未だに決まらない後継争いの影響で民の生活もままならないとか」

 雛里の説明で一つ一つ先の俺達が進むべき展開が頭の中で積み上げられていく。その内容は正史に酷似しているが少し違うモノ。ふと、鋭い瞳で俺を見る詠と目が合い、先に雛里と月の三人で煮詰めていたのか雛里の代わりに続きを紡いだ。

「袁術軍と戦って押し返したら、きっと荊州を攻めている孫策軍を呼び戻して私達にぶつけて来るでしょうね。そうなればあんたの希望通りに孫策と戦中交渉して袁術を乱世から退場させる為に動ける。その時は……」
「ああ、俺達が戦っている間に白蓮が勝てば曹操は動くだろうから……両袁家に対抗する為の戦を大々的に宣言出来る。侵略者打倒の名目でな。ただ、袁術側の戦への参加を孫策はある程度でいい、もしくは全くいらないと言ってくる可能性が高い。あれは自身での呉の平定を望んでいるだろうから。そうなれば白蓮の加勢として袁紹を潰す事が楽になるし、曹操に対する牽制もより強固に出来そうだ。白蓮が負けた場合は……袁家内部での対立から見ても袁紹軍は曹操を倒す為に動くか、曹操が機と見て攻め入るだろう。そうなった場合、戦については静観して、他の手を打っ
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