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乱世の確率事象改変
内なる覇を雛は見つめる
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仕上がってしまっていた。
 一番の原因は副長以下義勇軍時代からの兵達が伝えている話のせい。

『乱世に華を、世に平穏を』

 思いついたままに言った言葉は彼らの胸に溶け込んでしまい、今では俺に対して絶対の忠誠を誓うようになった。確かに嬉しい事ではある、しかし俺は一人でも多く生き残ってほしいから言った言葉なのに、彼らは口を揃えて俺の為なら命を捨てると言いやがる。俺が死ねと言ったら死ぬのかと問えば御大将の指示なら意味のあることなので心を預けて死にますと哀しい事を笑顔で告げる。
 俺の言う通りに動き、俺のために戦って死ぬ。それはもう身体の一部だろう。
 それならばと自分の悲哀に暮れる気持ちを無視し、彼らの心を優先して、兵全てに広めるだろうから副長にこんな事を言っておいた。

「徐晃隊は黒麒麟そのものになっちまった。俺が頭、右腕が副長、身体と他の手足が隊員の全てだ。脈打つ血潮は繋いだ想い、荒ぶる魂は救いたいという願い、そして輝く角は世界を変えたいという意思だな」

 その言葉がどれほどの影響を与えるか、俺自身気付いて紡いでいる。
 彼らは妄信者……では無く、狂信者となっていく。徳高きモノの元に集まった妄信者予備軍は、俺の言葉と存在によって自分の命を顧みない狂信者に堕ちて行く。
 最も効率的で、最も残酷で、最も徳から離れた存在。一番助かる数が多くて、一番死ぬ確率の高い兵士達。
 まさしく矛盾だらけの俺らしい隊だった。
 幸いな事に彼らの普段の生活は問題ない。家族もいるし友もいて、笑うし怒るし泣きもする。それでも俺の描く世界の為に戦う、と言ってくれる救えないバカ共。
 どうか一人でも多く生き残らせようと考えながら全ての兵達の背中を見送って、雛里と詠、月の待つ執務室に向かう為に踵を返して城内へと歩みを進めた。
 今朝、雛里の元に一通の手紙が届いたのがその原因である。
 練兵の時間がおしていた為に内容は聞いていないが、後で必ず煮詰めましょうと言ってきたので重要なモノだったのだろう。
 濡らした手ぬぐいで身体を拭き、着替えてから廊下を抜けて進むこと幾分。辿り着いた執務室の扉を二回、短くノックする。

「どうぞ」

 返答と共に扉を潜ると机に向かう三人が優しい笑顔で迎えてくれた。

「お疲れ様です」

 お茶の準備の為に立ち上がった月の労いに一つ頷き、俺はゆっくりと折り畳み椅子を広げて腰を下ろした。

「それで……俺だけを呼んだって事は朱里から他国の情報が入ってこれからの動きを決める為か?」

 今朝の手紙の内容は朱里からだろうと予想して問いかける。こちらでも情報収集は行っているがそれは袁術軍に対してのみ。他の場所に対しては本城に居る朱里に一任している。
 今回、俺個人を呼んだという事は俺達のこれからの予測を独自で
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