第三章
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・・・」
渡辺も唖然とした。そしてガクリ、とマウンドに崩れ落ちた。
「終わった・・・・・・」
森は一言そう言った。勝敗がこれで決してしまったのだ。
「アンビリーバブルッ!」
ブライアントは珍しく感情を露わにして叫んだ。そしてダイアモンドを回った。
また近鉄ナインとファンの歓声が彼を出迎えた。そして彼は逆転のホームを踏んだ。
この試合はそれが決勝打になった。あとは問題なく試合は進み近鉄の勝利となった。
これで並んだ。しかしもう一試合残っていた。
近鉄はここでエース阿波野秀幸を投入してきた。万全の態勢で挑んだ。
この試合で勝てなければ優位に立てない、しかし勝つことができれば優勝への道が大きく開かれる、そうした状況であった。
双方共に総力戦の状況であった。どちらも負けることは許されなかった。
まずは近鉄が先制点を入れた。流れはこのまま近鉄に向かうかと思われた。
しかし肝心の阿波野が固くなっていた。コントロールが定まらず暴投等で二点を献上してしまう。
「おい、何やっとるんや」
「ここで勝たな意味あらへんねんぞ!」
近鉄ファンが怒りだす。彼等もまたわざわざ藤井寺から駆けつけてきているのである。その想いは選手達と同じであった。
ブライアントは一回表の打席では敬遠された。流石にもう勝負をする気にはなれなかったのだ。
だが三回表、ランナーなしの状況で彼を迎える。ここは勝負するしかなかった。
ここでまた打った。勝ち越し、四打席連発のアーチはまたもや西武ファンのいるライトスタンドに突き刺さった。
「勝ったな」
仰木はこれを見て頷いた。流れは完全に近鉄のものとなったのを実感した。
ここまできては攻撃を仕掛けるまでである。近鉄は意気消沈する西武を完全に潰しにかかった。
それからは近鉄の一方的な試合であった。西武は大量得点を許し敗北した。何と敵地西武球場においてウェーブが起こった。西武ファンが近鉄の勝利、そして優勝を祝って起こしたのだ。
「おい、マジかよ・・・・・・」
テレビで試合を観戦していた者もそれを見て驚いた。だがその彼等の心も同じであった。皆近鉄の勝利を心から祝福していた。スポーツを、野球を愛する者としてごく自然な心であった。
最早もう一つの敵オリックスも問題ではなかった。彼等の前にあるもの、それは優勝の二文字だけであった。
十三日オリックスはロッテに敗れた。あのロッテにである。
「これも天命やろな」
オリックスの将上田利治はサバサバとした顔でこう言った。悔いはなかった。彼もまた野球を深く愛していた。
「今年は近鉄のもんや。あの連中には負けたわ」
そう言って微笑むとベンチをあとにした。そして静かに球場を去った。
そして十四日近鉄はダイエーに勝ち優勝した。彼等は昨年の
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