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錬金の勇者
10『タイタンズハンド』
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だろ……」
「どうやったら、そんな事……」

 地に付したオレンジたちの言葉に、しかしヘルメスは無表情に呟いただけだった。

「……お前たちの剣は素材になりそうにもないな……」
「……チッ」

 部下たちの弱さに業を煮やしたのか、ロザリアが槍を構える。しかしヘルメスは、凄まじいスピードでロザリアに近づくと、とんがりヘアーの男と、ロザリアの首根っこをつかんでほかの犯罪者プレイヤー達と同じところまで引っ張ってきた。

「は、はなせよ!どうする気だよ畜生!!」

 男が喚く。

 ヘルメスは再びアイテム欄を開くと、転移結晶より一回り大きい、濃紺色の結晶アイテムを取り出した。《回廊結晶》だ。

「こいつは俺の手持ちの回廊結晶だよ。依頼人にはすでに金を返してある。全員、これで監獄エリアに飛んでもらおう」

 ロザリアはわなわなとふるえていたが、ふと何かを思い出したようににやり、と笑って言った。

「もしいやだと言ったら……?」
「そうだな……こうしてしまおうかな」

 ヘルメスはロザリアに近づくと、その首根っこをつかんで唱えた。

「――――《等価交換(Equivalent Austausch)》」

 ぱき、と音が鳴る。それはだんだん連続した音になっていき、それにつられたようにロザリアの纏うレザーアーマーが()()()()()()()

「ひっ、ヒィィィ……」
「俺は《詐欺師》だからな。ここにいる全員を石に変えて、オブジェクト商人にでも売っ払ってやるよ。自分で彫りました、ってな」

 もう誰も逆らわなかった。ヘルメスの開いた回廊(コリドー)に、全員が収まっていく。そして、全ての《タイタンズハンド》メンバーが消えた時、回廊が消えると同時にヘルメスはぼそり、と呟いた。

「……装備を石に変えただけだったんだが……意外な怯えようだったな……もっとも、使用権限が別のIDに固定されてるアイテムを錬成するのは結構至難の業なんだが……」

 そして今度は、シリカの方を見て言った。

「すまない。君をおとりにするような形になってしまった」
「いえ……あ、あの、足が動かないんです」

 すると、ヘルメスはシリカの手を引いて、立ち上がらせてくれた。
 

 結局、ヘルメスは上の層に戻ってしまう事になった。けど、シリカは心の中で決めている。ピナに、今日一日の、冒険のことを。

 自分の、一日だけの、自分のことを「お姉さんみたいだ」と言ってくれた人のことを、教えてあげるんだと。
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