暁 〜小説投稿サイト〜
錬金の勇者
10『タイタンズハンド』
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「あたしのハイディングを見破るなんて。なかなか高い索敵スキルじゃなぁい?」
「どうかな。四分の一くらいは勘だよ……」

 ロザリアはヘルメスの答えに侮蔑の表情を浮かべると、今度はシリカに顔を向けた。嫌な予感がする。

「その調子だと首尾よく《プネウマの花》をゲットできたみたいね。おめでとう、シリカちゃん……じゃ、早速、その花を渡してもらおうかしら?」

 ロザリアの表情が、一気に邪悪なものに変わる。シリカの予想を裏切らなかったそのセリフに、反応したのはヘルメスの方だった。

「いや、残念ながらそうはいかないな。ロザリアさん。いや……オレンジギルド《タイタンズハンド》のリーダーさん、と言った方がいいか?」

 そこで初めて、ロザリアの表情が曇った。へぇ、と感心したような声を立てる。

「お、オレンジギルド……?でも、ロザリアさんのカーソルはグリーン……」

 窃盗や傷害などの罪を犯した犯罪者プレイヤーは、カーソルがオレンジになる。それは昨日、ヘルメス自身が言った事ではないか。

「抜け道なんていくらでもある。それに《タイタンズハンド》がとっていた行動は特に原始的な奴だ……グリーンのメンバーが獲物を取り繕い、待ち伏せスポットに誘導して、オレンジのメンバーが殺す」
「じゃぁ、この一週間同じパーティーにいたのは……!!」

 シリカは思わず叫んでいた。うふふ、とロザリアは嗤う。

「そうよぉ。戦力を評価すると同時に、冒険でお金がたまるのを待ってたの。一番楽しみな獲物だったシリカちゃんが抜けちゃったからどうしようかしらと思ってたら、なんかレアアイテムを獲りに行くって言うじゃなーい?情報収集って大事よねー」

 槍の穂先を撫でながら、ロザリアは言う。そしてヘルメスの方に向き直ると、

「でも、そこまで知ってながらのこのこその子についてくなんて、馬鹿?それともほんとにたらしこまれちゃったの?」
 
 言った。シリカは憤怒と羞恥で顔が焼けそうになる。しかしヘルメスは平然として答える。

「残念だが多分どちらでもないよ。学力的には馬鹿ではないと自負しているからね……とにかく、俺がシリカについてきたのは……この子についていけば、あんたが必ず姿を現すはずだと考えたからだ」

 ロザリアがより一層眉をしかめる。

「……どういう事かしら?」
「あんたら、十日くらい前に《シルバーフラグス》っていうギルドを襲ったよな。貧乏なギルドだったから、あんたは覚えてないかもしれないが……そこのリーダーだった男は、最前線で泣きながら仇討ちしてくれる奴を探していたよ。本当ならその依頼は、キリトみたいな誰からも信頼される奴が受けるべきだったんだろうが……生憎、奴は今迷宮区に籠ってるあたりでね。代わりに俺が受けたんだ……そしたらな。
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