10『タイタンズハンド』
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と第三十五層で出会った時。彼はなぜあそこにいたのだろうか。これほどの使い手なら、もっと上の層で活動するのが丁度良いだろうに……。
加えて、《錬金術》の存在。茅場晶彦が直々に渡したユニークスキルだと言うが、そんなスキルは聞いたことがなかった。ヘルメスは「攻略組は知ってるけど、中層プレイヤーにはあまり見せたくない」と言っていた。そういえば、上層から来たプレイヤーの話を聞いたときに、《錬金術》を使う《詐欺師》の話を聞いたことがある気がする。
まさか、とは思う。《詐欺師》なんていう言葉は、優しいヘルメスには似合わない。
「うわぁ……」
そんなことを思いながら《思い出の丘》を登っていくと、遂に丘の頂上へとたどり着いた。付近の丘より頭一つ高い頂上から見る、第四十七層フィールドの花畑。その景色は絶景で、シリカは思わず感嘆のため息を漏らしてしまった。
「あそこに、使い魔蘇生アイテムが咲く」
ヘルメスが丘の頂上、さらにそのてっぺんにある、石の祭壇の様なオブジェクトを指さした。シリカがそこに駆け寄ると、今まさに、輝く純白の花が咲き誇ろうとしているところだった。
しゃらん、と音を立てて開いた、ユリにもにた、その花を手に取ると、『【プネウマの花】を手に入れました』という表示が視界に出てくる。
「蘇生アイテム《プネウマの花》……プネウマって言うのは、ギリシャ語だったかで《命》とか《精神》みたいな意味だったと思う」
「へぇ……」
ヘルメスの博識に感嘆してしまう。知識人と言うのは、そういう豆知識を一体どこに収めておくのだろうか。現実世界ではそれほど記憶力のいい方ではなかったシリカは、ヘルメスの博識に憧れてしまう。
「その花の中にある蜜を心アイテムにふりかければ、ピナを生き返らせることができる。けど、この辺はちょっと強いモンスターが出るからな。安全第一で、主街区まで戻ってから蘇生させよう」
「はいっ!」
シリカはヘルメスに笑顔でうなずきかけ、思い出の丘を降りた。
前半で大分モンスターを乱獲したせいだろうか。モンスターのPopに遭遇することは無く、無事《フローリア》のゲート近くまで来ることができた。最初にわたった橋に足をかけた、その時だった。
ヘルメスが、シリカの肩に手をかけた。
「……ヘルメスさん?」
「―――――そこにいるんだろう?出て来いよ」
ヘルメスが、今までより一トーン低い声を発した。すると、橋の向こう側にある木が揺れて、木の後ろから、ドぎつい赤髪の女が姿を現した。黒いぴっちりしたレザースーツに、十字型の穂先の槍……。
「ろ、ロザリアさん……!?何でここに……」
瞠目するシリカの問いに、しかしロザリアは答えず、ヘルメスの方を見て言った。
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