第二章
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ず日本に渡ることになった。中日の助っ人であった。
だがこの時の中日には郭源治、ゲーリーという二人の助っ人がいた。彼の出番はなかった。
「俺は試合に出たいのに」
そういう不満があった。ここで彼に転機が訪れる。
近鉄の主砲デービスが麻薬の不法所持で現行犯逮捕されてしまうのである。当然彼は退団となった。
主砲を失った近鉄は慌てて彼の穴を埋める人材を探す。そこでブライアントに白羽の矢が立ったのである。
「使えるのか!?」
こういう声もあった。だが今はそんなことを言っている暇ではなかった。とにかく時間がなかった。藁にもすがる思いであった。
こうして彼は慌しく近鉄に金銭トレードで入団した。そしてすぎに試合に出た。彼は怖ろしいまでに打ちまくった。
「何だあれは」
「あんな奴見たことがない」
相手チームのピッチャー達はその強烈な打撃に怖れをなした。いや、最早それは『畏れ』であった。
シーズン後半の七四試合だけで三四ホーマー七三打点、鬼神の如き活躍であった。
だがこのシーズン彼は一時不調に陥った。彼は豪快なアーチを飛ばす一方で三振の多い男であった。またその三振が桁外れに多かったのだ。
「三振か、ホームランか」
そういう男であった。だがチャンスには必ず派手なホームランを飛ばした。普段は寡黙で読書が好きな男だがその身体には激しいパワーがみなぎっていた。その彼が打席に向かった。
四回表、四対零。西武圧倒的優勢という状況であった。
郭は投げた。スリークォーターの投球フォームから白球が放たれた。どのような強打者も容易には打てないボールだ。
しかしブライアントのバットが一閃した。そしてそれをスタンドに放り込んだ。
「あいつが打ったか」
仰木はそれを見て言った。だが表情は硬いままだ。まだ三点差だ。勝利には程遠い。
西武はまだ攻撃を仕掛けてきた。すぐに追加点を入れる。これで勝負あった、かと思われた。
「終わりかな」
「西武の優勝やな」
近鉄ファンの間からそういう声が聞こえてきた。だが勝負は意外な展開を見せる。
近鉄は攻撃に出た。郭を攻め立て満塁とした。
「監督、どうしますか?」
西武ベンチではコーチの一人が監督である森祇晶に話しかけた。
「そうだな」
森は少し考え込んだ。
「郭の調子は決して悪くはない。あのホームランは仕方ない」
彼は今日の郭の投球を思い出しながら言った。
「ここは続投だ。あの男を抑えればそれでこちらの勝利だ」
彼はそう言って郭の続投を決定した。確かにここが勝負どころであった。森の采配は間違ってはいなかった。
だが彼は予想される範囲内での采配をしただけであった。確かに彼は知将である。その采配には隙がない。後に横浜ベイスターズの監督となった時ヤクルトの正捕手古田敦也の
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