八幕 Sister Paranoia
12幕
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ミラたちはルドガーとエルに事態を説明するために去った。シャウルーザ越溝橋前にはフェイと、ジュードの二人が残された。
「一緒に行かなくてよかったの?」
ジュードに尋ねられ、肩が跳ねた。
言葉を探す間、ジュードは待っていてくれた。
「今、お姉ちゃんと会ったら、また、ケンカしちゃうから」
「そっか」
「ジュードは。行かないの?」
「フェイを放って行けないよ。友達だからね」
「……ごめんなさい。フェイのせいで、ミラさまと一緒に居られなくて」
「僕が決めたことだから。何でもかんでもフェイのせいじゃないんだよ」
ふるふる。
「フェイは救いようがないくらい悪い子だから、いつも取り返しがつかなくならないと分からない。セルシウスの時も、ミラの時もそう。フェイなんか、あの湖に沈んだ時に溺れて死んじゃえばよかった。そうすれば、ミラが死んじゃうこともなかったのに」
「そんなに自分を責めないで。責任はあの場にいた僕ら全員にある」
ふるふる。
「わたしの、せいなの――」
包帯を巻かれた手を見下ろした。メスで磔にされた左手。今もずくずくと痛むのに、イタイという感じがしない。
より強く感じるのは、胸のイタミ。ミラが死んだという事実が、手などよりずっとイタイ。
「どう、して。どうしてもっと早く気づいてあげられなかったんだろう」
「フェイ……」
「ミラ、悩んでたのに。死ななきゃいけないの、くるしがってたのに……絶対コワかった、の、に。フェイ、ミラのこと助けてあげられなかった……っ」
言えば言うほど涙が溢れて止まらなかった。袖で何度顔を拭っても泣き止めない。
(わたし、知らない内にどれだけミラを悲しませたんだろう。ミラだけじゃない。きっとたくさんのヒトをキズつけた。人のキモチが分からなかったから。分かろうともしなかったから。パパがイラナイって思うのも当然だ。わたし、こんなにヒドイ子だったんだ)
「もうヤダぁ…! こんなの二度とヤダよ…失くしちゃう前に、ちゃんと分かるようになりたいっ!!」
「うん――うん、そうだね」
ジュードがフェイの両肩を引き寄せ、胸板に額を押しつけさせた。
フェイは白衣に縋って泣いた。
「分かるようになろう。二度とミラさんみたいな犠牲を出さないために。僕も手伝うから。君が少しでも前に進めるように手伝うから」
「ふっ、っく…! うぇ、えぅ…うん、うん…なる…絶対なるからっ!」
うわ言のようにくり返し少女は泣いた。
少年は少女の涙が尽きるまで、少女の背中を撫で続けた。
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