第5章 契約
第83話 舞踏会の夜
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かのような言葉。
思わず、自らの弱い心を護る為に着込んで居た鎧を脱ぎ捨て、素の自分を晒して仕舞いそうに成る……。何処か心の奥深くに隠された昔の自分が帰って来そうになる懐かしい言葉。
それは……。
「お誕生日、おめでとう」
☆★☆★☆
石で覆われたやや暗い廊下。
普段通り、軽く二回ノックを行う俺。
そして、
「姉上、私です。ルイスです」
……この国の主に因り与えられた名前と立ち位置を口にする。
俺の右には蒼き吸血姫タバサ。今は、昔の名前、オルレアン大公家の皇女シャルロットを取り戻して居る少女。
そして左側にはラグドリアン湖の精霊。どうやら、この世界の水の精霊王と言うべき存在らしき、湖の乙女。
最後に、俺の後ろにそっと着いて来る黒髪の少女。妖精女王ティターニア。
何と言うか、俺と彼女の立ち位置に関しては、最早絶滅したと言われる大和撫子の鏡のような位置関係と成っているのですが……。
但し、現実には、彼女が奥ゆかしい女性で有るが故に、俺の後ろから黙って付いて来ていると言う訳ではなく、俺の右と左は常にタバサと湖の乙女に占められて居る為に、彼女が入り込む隙間がない、と言うだけの事なのですが。
タバサは、最初の出会いの時からずっと変わらずに俺の右側に立ちますし、
湖の乙女は、……俺が左側に他人が立つ事を心の中では嫌って居る事は気付いて居るとは思いますが、タバサが頑ななまでに右側に有り続けるので、自然と彼女の立ち位置は左側、……と言うように成って仕舞ったのです。
おそらくタバサは、俺の左側に彼女が立った時に俺が発する微かな違和感を気にして、左側に立つ事を行わないのでしょう。
「開いて居るよ、入って来な」
部屋の内側から普段通りの、ややぶっきら棒な口調で答えて来るイザベラ。このおデコの目立つ姫さんは、俺の立場がタバサの使い魔だろうが、ガリアの騎士さまだろうが、自らの弟設定になろうが態度は変わらない、と言う事なのでしょうね。
もっとも、俺の周りには、相手の立場で対応を変えるような人間はいないようなのですが。
ゆっくりと開く扉。その先には……。
薄暗い廊下から適度な明かり、科学の力に因り作り出された人工の明かりに照らされた室内に広がって居た光景は……。
何度来ても変わらない、紙と活字に支配された、タバサや湖の乙女がこの部屋に籠ると丸一日は出て来なくなるので有ろうと言う部屋でした。
扉が開いた瞬間、相変わらず、少し恍惚とした……いや、表情は普段通りの無の表情を浮かべて居るのですが、少し余計に一歩踏み出したいような雰囲気を発しながらも、辛うじて持ちこたえる湖の乙女と、
この部屋には通い慣れている所為なのか、もしくはこの部屋の書籍に
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