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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第83話 舞踏会の夜
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…いや、二柱(ふたり)が、僅かに俺の方に視線のみで同意を示す答えを返して来る。

 そう。タバサの後ろに付き従っている紅い髪の毛の少女は人間では有りません。
 彼女はソロモン七十二の魔将の一柱。第四十席の魔将グレモリー。魔界の公爵にして悪霊の二十六個軍団を支配する存在。

 但し、グレモリーと言うのは俗称。いや、賊称と言うべきですか。
 このグレモリーと言うのは元々、彼女を神の位から追い落とした連中が付けた名前で有り、まして、彼女を召喚した際に顕われたラクダを意味する言葉『ギメル』がなまった物。本来の彼女を呼ぶ際には相応しい名前でも有りませんし、そもそも、その名前で呼ばれる事を彼女は好みませんでした。

 元々は旧約聖書に登場する『ラクダに乗る者リベカ』が、何らかの形で貶められた姿で有るのは間違いないでしょう。

 彼女をエスコートする騎士風の青年は、同じくソロモン七十二の魔将の一柱、魔将ウヴァル。その職能は女性の愛を獲得する事。現在、過去、未来の占術を得意とする悪霊三十七軍団を指揮する地獄の公爵さま。
 そして、そもそも、レヴァナが『グレモリー』と呼ばれるようになった原因のラクダとは、彼、ウヴァルの事。

 彼、ウヴァルは元々、レヴァナの二代目の乗騎。ラクダの姿をした魔将だったのですから。
 尚、最初の彼女の乗騎を務めていたソロモン七十二の魔将の一柱、魔将マルコシアスは、現在、ジョゼフの玉座の後ろに黒いオオカミ犬の姿で寝そべって居ります。

 前回、ゴアルスハウゼン村周辺で起きた事件の際に倒されたヨグ・ソトースの球体。その一番の使い魔ゴモリーが残した王冠を触媒として呼び出した結果現われたのがレヴァナ。
 あの時に名付けざられし者だと自称した青年が言うように、使い魔ゴモリーとは地球出身の魔物。ソロモン七十二の魔将の一柱グレモリーと同一視される存在。故に、と言うか、しかし、と表現すべきか。何故か俺が同じ触媒を用いて召喚をしても使い魔ゴモリーが現われる事はなく、代わりにグレモリー。それも、魔神として貶められた存在と言うよりは、それ以前の古い月関係の女神だった頃の彼女の召喚に成功し、
 そして、彼女から、彼女の配下で有る、魔将ウヴァルと最強の魔将マルコシアスの召喚に成功。そのまま三柱をタバサの式神へと配属させた、と言う訳。

 流石に前回のような事件では、今までの俺が連れて居た式神だけでは手が足りませんでしたから。



 ジョルジュのエスコートで鏡の回廊の中心に向けて静々と進むタバサ。

 その瞬間、出し抜けに世界が色と音を取り戻した。
 長く引かれる裳裾(もすそ)と翻る扇。
 笑いさざめくような声、声、声。
 鳴り渡るヴァイオリンの音色。

 中世……。いや、ここ、ヴェルサルティル宮殿の鏡の回廊
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