第5章 契約
第83話 舞踏会の夜
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…成るほど。実際の言葉ではなく、心の中だけでその言葉を呟き、現実の行動として軽く首肯いて見せる俺。但し、この行動自体は、周りの人間からするとやや意味不明の行動。
おそらく、過去にこの世界は何らかの理由で未曾有の危機が訪れた事が有る。
いや、そんな事は何処の世界でも起きて居る。別に珍しい事では有りません。
そんな過去の危機を未然に防いだ存在たち。その伝説の集合体がおそらく、始祖ブリミルの伝説。
その色々な英雄譚の主人公たちを集合させて、一人の英雄として確立されたのが始祖ブリミルであり、それを上手く自分たちのプロパガンダとして利用して勢力を伸ばしたのがロマリアだと考えると、割とすっきりして来るような気がしますね。このような例は、地球世界でも結構有りますから。
例えば、大和武尊。例えば武蔵坊弁慶。エトセトラエトセトラ……。
まして、この結界内に存在している人物たちは、見た目は人間に見えるけど、純然たる意味で言うのなら、すべて人間以外の存在。
その英雄譚に語られて居た人物が現在のブリミル教に取って都合が悪い種族だった場合、その英雄譚自体を違う人物の物語へと差し替える可能性は高いと思いますから。
例えば、タバサやジョルジュと同じ、真の貴族だった場合。
例えば、湖の乙女やティターニアのように、高位の精霊だった場合。
そして、俺やノートルダム学院長のように、龍種だった場合は……。
それに、オスマン学院長のように――
「さて、長話をして仕舞ったようじゃな」
六千年前の伝説と化した人物の実在を信じて疑わなかった自分のボンクラ加減に気付かされた瞬間、オスマン老が周囲を見渡しながらそう言う。
そして、
「お主らも、何時までもこんな場所に閉じ籠っていないで、新しい舞踏。ワルツのひとつでも踊って来たらどうじゃな」
夕飯の心配は、昼飯が終ってからでも遅くはないのじゃからな。……と、そう締め括るオスマン老。
確かに、今、得られる情報には限りが有りますか。ここで判らなかった部分については、俺の実の姉設定のイザベラにでも問えば良いだけの事。
それに、今夜の主賓は俺とタバサ。そのふたりが、あまり隅っこに隠れていたのでは、この御披露目のレセプション自体の意味が薄れて仕舞いますから。
それならば、先ずはタバサをエスコートして……。
などと考えて、自らの右側に視線を送ろうとした矢先、俺の目の前に差し出される青年の右手。
そうして、
「ならば、ひとつ私めと踊っては頂けますか?」
……と告げられる言葉。
その右手の先には、当然のようにやや意地の悪い笑みを浮かべた、ガリアの青年貴族の整った顔が存在して居た。
……って言うか、
「喜んで、……などと答える訳がないやろ
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