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蒼き夢の果てに
第5章 契約
第83話 舞踏会の夜
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ィターニアはその精霊の王と言うべき存在。
 これだけの人材が揃って居て、その精霊力の暴走とやらをどうにか出来ないとも思えないのですが。

 しかし……。

「アルビオンが浮遊島と成って居るのは、精霊力の暴走などが理由では有りません」

 少し硬い表情でそう答えるティターニア。
 ……ハイ? こんな段階。その聖戦を起こす理由の最初の取っ掛かりさえ、国内の不満を、対外戦争を開始する事に因って有耶無耶にしたいロマリアがでっち上げた与太話だと言うのですか?
 確かに、タバサに聞いた話に因ると、ロマリアの教皇は現在二十歳を少し超えたばかりの、世間の常識から言うと青二才と言って良い程度の人物。
 そして、確かロマリアの政治形態は教皇を中心に、その補佐として枢機卿団と言う組織が政治を行って居る事となって居たはず。……なのですが。
 その枢機卿団と言うのは宗教家と言うよりは老獪な政治家集団と考えた方が良いらしく、そんな連中を年若い教皇が完全に御しているとは到底思えないトコロから考えると……。

 年若い。しかし、見た目的には見栄えがする、そして、民に人気のある教皇をお飾りに座らせ、政治の実権はその枢機卿団が牛耳っている、と考える方がしっくり来ますか。

 そして、ロマリアは数次に及ぶ聖戦の失敗やその他の要因に因り、内政は既に破綻状態。ガリア王家などにもかなりの借金が存在して居るのは事実。
 国内の神殿の荘園から逃げ出した農奴が流民と化して、国境部分からガリアにも多く逃げ込んで来ているようですから……。

「そもそも、あなたも気付いて居るはず。単なる精霊力の暴走では、現状のアルビオンを形作る事が出来ない事を」

 俺が、壮麗な神殿の奥深くに存在している、史上最も若く、最も美しいブリミルの代理人と言われる若者の懊悩に心を飛ばして居たその時、更に続く湖の乙女の落ち着いた、ややもすると冷たい、と感じられる口調が、現実世界……ガリアのリュティスに存在するヴェルサルティル宮殿の離宮に存在するイザベラの執務室へと呼び戻した。

 しかし、俺が既に気付いて居る事……。
 彼女の冷静な言葉が引き金となり、思い込みに因って近視眼的に成って居た部分に気付かされる俺。
 ……そう。確かに、俺の持って居る知識では、現状のアルビオンを作り出すのは、単なる精霊力の暴走だけでは無理です。

「通常、高度が千メートル。つまり、一リーグ上昇すると、気温は六度低下する。
 そして、この春にアルビオンに向かった時に上昇した高度は三千メートル以上」

 どうにも、思い込みと言うヤツは、自らの正常な思考の妨げにしかならないな、そう感じながら、話し始める俺。
 そう。異世界なんだから、剣と魔法のファンタジー世界なんだから、浮遊島のひとつやふたつが浮かんで居ても
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