暁 〜小説投稿サイト〜
秋雨の下で
第九章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
は戦術として見た。だが彼は勘でそれを感じたのである。
 石渡はミートの上手い男である。右に流すのも得意だ。
 それは広島もわかっていた。一塁の衣笠と二塁の木下富雄は既に併殺の用意をしている。
 だがそれはない。江夏はそう確信していた。
 どうやら今サインは出ていないようだ。広島ベンチにいる古葉も水沼も緊張をもって西本を見る。
「連中はどうやらわしの動きに注目してくれとるようやな」
 それは西本も感じていた。だからこそ軽率な動きは出来なかった。彼は慎重にサインを送った。
「来るか」
 古葉は身構えた。だがそれはなかった。
 江夏は一球目を投げた。それはカーブであった。
「しめた!」
 それを見た西本は思わず心の中で叫んだ。それは打ちごろの絶好球であった。
「石渡なら打てる」
 彼は確信した。だが石渡のバットは動かなかった。
「うう・・・・・・」
 見送ってしまった石渡は思わず呻いた。どうやら振ろうとして振れなかったようだ。
「打ってくるつもりか」
 ボールを受けた水沼はそれを見ながら思った。だが石渡の表情からそれは読み取れない。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ