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錬金の勇者
9『錬金一家』
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たんだな。ある日、いつも猫がいる場所に行ったら、そこ居たのは散々痛めつけられた猫だった。治療は間に合わなくて、その猫は死んだ……姉貴が、その時にすごい泣いたんだ。俺も悲しかった。大切にしてた猫が死んでしまったのも悲しかったが、それ以上に姉貴が泣いたのが悲しかった。……今は、医学系の大学に進んでると思う」
「へぇ……」
「……だから俺は、その時助けられなかった猫の代わりに、君の友達を助けようとしているのかもしれない。自分勝手な奴だよな。ごめん」

 いえ!とシリカは声を荒げる。そんなことは無い。絶対にない。

「ヘルメスさんは私を助けてくれたんです。だから自分勝手なんかじゃありません!二人で一緒に、ピナを生き返らせましょう!」

 ヘルメスは、驚いたように目を開けていたが、やがてにっこりとほほ笑んだ。シリカが初めて見る、《錬金術師》の笑顔だった。

「ありがとう、シリカ。……さぁ、明日は早いぞ。もう寝よう」
「はい」

 おやすみなさい、と言って、シリカは自室に戻った。

「……姉貴。今はどうしてるんだ。あんたの義弟(おとうと)が、別の世界で罪滅ぼしをする気になっているのを見たら、どう思う……?」

 ひとり、ヘルメスが呟いたのは、シリカには聞こえなかった。
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