9『錬金一家』
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ぇええ!?」
素直に驚いてしまった。《トリメギストス・アルケミー・カンパニー》に関して、別にシリカはそれほど詳しいわけではないが、相当巨大な会社だったように記憶している。その社長の息子という事は……
「跡取り息子ってことですか……?」
「正確にはその一人。まぁ、王位継承順位は最下位ってあたりかな……で、さらに信じられない話が続くんだが……俺の一家は、その多くが《錬金術師》だ」
「錬金術……?」
ファンタジー物の小説や映画でよく見るあれだろうか。石ころを金に変えるという。ヘルメスはうなずいた。
「何でそんなことができる奴がいるのか、俺もよくわからない。ただ一つ言えるのは、俺の家はその《錬金術師》の家系であり、リアルの俺も少しはそれができるという事だ。《錬金術》スキルは、開発者が直々に俺に渡しに来た」
「へぇっ!」
開発者、と言えば茅場晶彦だ。シリカにとってはこの世界に自分たちを閉じ込めた悪夢のような存在だが、それでも開発者直々に、と言うのは驚かざるを得ない。
「親父には跡取りを残す為に奥さんがいっぱいいてな……うちの母さんはその最後の一人だった。母さんより後には奥さんが増えてないからな……とりあえず、俺には兄や姉がたくさんいた。もちろん、皆《錬金術師》さ。俺は八歳あたりまで普通の家で暮らしてたから、初めて《錬金術》を見た時は素直に驚いた。もちろん詳しい知識なんてないから、兄貴やおじさん達には「できそこない」とか「落ちこぼれ」とかさんざん言われてな……」
「そんな……」
人は技能だけで判断してはいけない。それはシリカの父の持論だった。それを平気で無視する人がたくさんいる家で過ごすのは、どれだけつらい事だったのだろう……。
「そんな中で、俺に優しくしてくれたのが、六歳年上の兄貴と、四歳年上の姉貴だった。二人は実の兄妹だったらしくて、中が良かったんだが、俺にも実の弟みたいに接してくれたんだ。二人の母様はあんまりいいところの出じゃないらしくて、一族は二人を血筋のことであざけった」
それもおかしいと思う。血統で人を判断するなんて、差別だ。
「でも、兄貴は強かった。俺がSAOで生きてこられたのは、兄貴が俺に散々戦い方を教えてくれたからだ。戻ったらお礼をしなくちゃな……。姉貴は、《錬金術》をうまく扱えない代わりに、純粋な《超能力者》だった。能力は強くは無かったけど、その分周りの人には人一倍優しかった。いつもニコニコ笑っている、陽だまりのような人だった……」
ヘルメスはそこで、昔を思い出すように目を閉じた。
「姉貴は、小さな猫を飼っていた。捨て猫だったのを拾ってきたらしくて、内緒で飼っていた。知っていたのは俺と、兄貴と、姉貴だけだった。けど、誰かがそれを見てい
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