9『錬金一家』
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だ……。けど、俺がプレイしたどのゲームにも《悪人》はいた。そういうのをロールプレイって言うんだけど……この世界ではわけが違う」
ヘルメスは自分の頭上を指して言った。
「ここに、カーソルがあるだろう。俺達のは緑色だが、犯罪者はオレンジ色に変わる。特に、殺しをする奴は、カーソルがその色に変わるわけじゃないけど《レッド》って呼ばれる。……そういう奴らは、心の底から腐ってるんだと思う。そんな奴らを野放しにする世界も、腐ってると思う……」
ヘルメスが、絞り出すように言った。みしみしとテーブルが音を立てる。彼が腕に強く力を込めているせいだ。普通、テーブルは腕に力を入れただけでは音を鳴らさないのだが……一体彼の筋力値はどうなっているのだろう。
とにかく、何か言わなくては、と思って、とっさに口を開く。
「せ、世界は、腐ってなんかいないと思います!」
「え……?」
「だって、世界が腐りきってたら、あたしがヘルメスさんに会って、楽しく話すこともできなかったかもじゃないですか。何千人もいる中で出会えたなんて、すごい幸運だと思います」
ヘルメスは、そうだな、と小さくつぶやいて、微笑した。
「そうだな。ありがとう、シリカ」
「いえ!」
シリカは、頬がなぜか熱くなるのを感じた。チーズケーキまだかなーなどと言ってごまかしてみる。ヘルメスが不思議な表情をしていたのが目に入った。
「ふぅっ……」
シリカは部屋のベッドに倒れこんだ。先ほどまでヘルメスからもらった武器のならしをしていたが、思った以上に使いやすくてびっくりした。確認した性能はものすごく高いのに、すごく軽い。低レベルのシリカでも扱える軽さだった。
「もっとお話してみたいな……」
シリカは、ヘルメスのことを思いだす。彼が自分に似てると言った、義理のお姉さんのことも教えてもらいたい、と思った。
ちょうどその時、こんこん、とドアがノックされる。
「……はい」
「シリカ、四十七層のことについて話しておくのを忘れていたんだが……どうする?明日にするか?」
「あ、今いきます!」
シリカはアイテム欄から、普段着の中では一番気に入っている物を装備する。ドアを開けると、ヘルメスが立っていた。黒銀色のコートは外されて、代わりに地味なスウェット姿になっている。
ヘルメスの部屋は偶然にもシリカの部屋の左隣だった。中に入ると、シリカの部屋と鏡合わせになっているかのようにそっくりな内装が目に入った。
ヘルメスはテーブルの上に、ごとり、と不思議なアイテムを置いた。オルゴールの様な形状だが、中には小さな水晶がおさめられている。
「それは何ですか?」
「ああ、これは《ミラージュスフィア》っていうアイテムだ。知人が偶然
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