番外中編
蒼空のキセキ3
[1/5]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
シドのことが好きになったのは、いつからだったろう。
シドのことを、自分が心から好きになれるって思ったのは、いつだろう。
私にはそれが、はっきりした一場面として思い浮かばない。
―――気づいたら、好きになっちゃってた。
驚いた、こいつはすげえ、これがふぉーりんらぶか、っていうくらいに。
目で追うことすら困難なほどの疾走。視界から唐突に消えるステップ。鞭のように鋭く撓り、相手を貫く腕の一撃。ギルドの仲間として、横で肩を並べて戦ううちに、その姿にいつのまにか見惚れてしまってた。
それからの日々で、彼を見て、思ったよりずっと面白くて、優しくて、素敵な人なんだって知った。私たちのくだらない掛け合いの意味をちゃんと理解して、そして自分の役割を理解して。私たちの、私のしてほしいことが、ちゃんとわかってるって伝えてくれるような、そんなささやかな優しさ。
ねえ、伝わってるよね? 私の想い、分かってるよね?
私は、待ってるよ? あなたのこと、待ってるんだからね?
それが私の……女の子の、お姫様の、ヒロインの、夢なんだから。
◆
「ファーっち、右お願いっ! 左は私がさくっとやっちゃうよっ!」
「了解ッス!」
「レミたん、支援はそっちにっ! シドは惹きつけよろっ!」
「……おっけー」
「りょーかい、っと!」
四十九層空中ダンジョン、『スカイステップ』。辺境村であるスカイネストから数分の場所にあるそのダンジョンで、私たちは何度目かの戦端が開かれていた。この場所は通常のダンジョンとは違い、円形の階層を階段で登るだけのダンジョンだ。そのためここでは「ザコ戦」なるものがなく、代わりにまあ「中ボス戦」とでもいう戦闘を数回繰り返す構造になっている。
ああ、そうそう。ギルド、『冒険合奏団』における司令塔は、私だ。
なんというか、気分はさながらジャンヌダルク。皆の者、私に続けーっ、みたいなそんな感じだ。
三人は私の声に力強く答えて、それぞれの獲物を構える。
指示通りに右に駆け出す二人を見送り、私も左を見据える。
その視線の先には、信じがたい速度で疾駆する黒服の影。
それを確認してから、私は右手で自分のストレージを開き、コマンドを打ち込む。
使うスキルは、《両手槍》。
取り出すのは、私の背丈をはるかに超える、重厚な突撃槍。
シドがフロアの左翼を旋回していた一体の大鷲にとび蹴りを喰らわせて反転、そのままなめらかに身を翻してこちらに帰ってくる。眠たげな瞳が……私の気のせいかもしれないけど……少しだけ笑うように細められる。私もそれに応えて、満面の笑顔を浮かべる。
「さあっ、かかってらっしゃいなっ!」
前方のシド、その後ろに接
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ