番外中編
蒼空のキセキ3
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クエスト、《大空の主》。
それはラスボスたる巨鳥、《いにしえの巨鷲》が麓の村、スカイネストから攫った女の子を私たちプレイヤーが救い出すというなんとも王道、実に勇者といったクエストだ。ちなみに私はもう、依頼を受ける段階でテンションは上がりっぱなしだった。
「でもオイラ、ギルマスの気持ち分かるッスよ。やっぱこういうのは男として燃えるッスね!」
「……確かに。……でも、ソラは、女の子……」
「いやいやっ、心はヒーローですよっ! そうだよねっ、たのしーよねっ!」
「にしてももーちょい緊張感をだな……」
「もーっ、シド君は固いなーっ、楽しい時は楽しいでいーじゃんっ!」
ファーたん、レミっちは私の言葉に同調してくれたけど、シドは口の上ではちょっぴり不満気だ。
でも私は……ううん、この場所ではみんなが、それが「役割分担」だってわかってる。私は嬉しい時、楽しい時にはしゃぎすぎちゃう。それをシドはよくわかっていて、……もしかしたら「いっしょにはしゃぐのが恥ずかしい」っていう子供っぽい心もあるのかもだけど……その役目を買って出てくれているのだ。そしてレミちゃん、ファーっちの二人も、「シドなら大丈夫」と認めてくれているのだ。
そのことが、すごくうれしい。
なんだか「二人はお似合い」って言われてるみたいで。
「まーそんなこといってもさっ! ボス戦なったらシドだっていけいけなんでしょっ?」
だから、そうだって見せつけてやる。
シドの腕をからめ取って、胸に抱きながら、にんまりと顔を見上げる。
そこにあるのは、幽かな笑み。
そうだ。私には分かっている。
「……まあ、な。今回は久々に、なかなかガチだしな」
彼だって、心に熱いものを、ちゃあんと持ってるんだってこと。
◆
さて、ここでひとつ。
私たちのギルドのちょっと「変わった」ところを話そうと思う。
―――より冒険を、よりスリルを。
―――身の安全より、心躍る危険を。
このデスゲームで、一見すれば頭がおかしいように思われれかもしれないし、アスナっちやリズは聞いたら眉をひそめるかもしれない。それのせいで私たちは「中層エリア」と「攻略組」の中間という妙な扱いを受けていることだって知ってる。
これは、私のお願い……ううん、わがままだった。
この世界が消えればもう二度とそれが叶わない私の、わがまま。
(そのわがままのために、私は皆の命を危険に晒してるんだ……)
そのことを、二人には口に出して伝えてはいない。
でも、口に出したことはないけど、レミはきっと気づいてる。
ファーは知らないだろうけど、それでも分からないなりに何か感じているかも。
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