番外中編
蒼空のキセキ3
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てもらっては困る。
「くぅっ、……ま、まだまだ、ッスよ!!!」
彼だって、この『攻略組』の一歩後ろレベルのギルドである、《冒険合奏団》の壁戦士なのだ。ふつうなら盾を弾かれて体制を崩しかねない突進を、どっしりと重心を落としての前傾姿勢でしっかりと堪えてみせる。ダメージこそあるものの、それは盾越しのわずかな分量。
「さぁ、反撃ッス!」
ファーの声が聞こえたわけではないだろうが、敵の大鷲が舌打ちするように一声啼いて盾を足蹴に再び飛び上がる。羽ばたきながらの垂直上昇だが、そこに滑空時の速度も勢いもない。そんなふらふらした飛行では、
「……ぐっじょぶ」
レミのブーメランの、いい的だ。飛び上がった瞬間を薙ぐように空中を奔った刃が、その体を真一文字に切り裂いていく。嘶く大鷲の体力がガクンと削られ、その動きが一瞬完全に停止、無防備な瞬間を生み出す。
「もらいっ! ファーたんっ、肩借りるよっ!!!」
その隙を捕えたのは、攻撃特化型、ソラ。
ファーの頑丈な鎧の肩を蹴って跳躍、そのまま空中で流れるように片手剣の一閃。ナナメに走る《スラント》は決して高位のソードスキルでこそないものの、隙を突かれて急所を切り裂く一撃はそのHPを吹き飛ばし、鷲の巨体を爆散するポリゴン片へと変える。
「うっしっ、次っ! シドっ!」
「りょーかい、っと!」
満面の笑みで指示を飛ばすソラの声に対する答えは、シド。
鷲が三体の同時突進だったのを確認した段階で、彼は既に動いていた。敵とファーの衝突の直後に、横からすり抜けるように盾を霞めるようにその場を駆け抜けての小攻撃。急浮上しようとした一体はレミに任せ、真横に滑るように飛行した二体のヘイトを煽って自分を追うように仕向けていたのだ。
「おし、いくぞ!」
「おっけーッス!」
再び滑空の姿勢に入った二体にその背後を追われながら、シドが声を上げる。答えるのは、受け止め役たるファー。今度の交錯は一体分衝撃が減った分、彼の体に押し勝つには至らず二体の鷲は苦々しく嘶いて羽ばたく。
あとは、この繰り返しだ。
《冒険合奏団》は、空戦という難しい戦闘を完全にパターン化してこなしていた。
◆
「ふっふっふっ!」
「ずいぶんご機嫌だこったな、我らがギルマスは」
横のシドからそう声をかけられて、私は初めて自分が声を出してしまっていたことに気づいた。ちょっと気恥ずかしい気もしたが、それよりもずっと大きな興奮が私を突き動かして大きくブイサインを作る。
「だってっ、このシチュエーションっ! ワルモノにとらわれたお姫様を取り返す勇者ご一行なわけですよ私たちっ! これで燃えなきゃうそだよっ!」
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