第十三章
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確かに強面である。しかし江夏は案外繊細なところがある。そして彼も西本の持つ温かさに魅せられていたのだ。
そう思った者が他にもいた。野村であった。
彼もまた西本の言葉には素直に耳を傾けた。偏屈だの底意地が悪いだの言われているがその実は寂しがり屋で心優しいのである。
「私なぞよりこのチームのことはご存知ですから何かとアドバイスを頂けたらいいと思っております」
後に阪神の監督になった時彼は取材に来た西本に対して言った。これは本心からくる言葉であった。彼は南海にありながらも西本の心をよく感じていた。そして彼を深く敬愛していたのだ。
敵にも慕われる男であった。その男の肩は落ちてはいなかった。
「帰るで。明日からまた練習や」
彼はそう言うとベンチに姿を消した。
「はい!」
ナインはその言葉に頷いた。そしてそのあとについて行った。
あれから長い年月が経った。戦場となった大阪球場はもうなく死闘を繰り広げた戦士達も全て現役を退いている。西本も引退した。だがその想いや志はまだ大阪に残っている。そして彼等の志を受け継ぐ戦士達を永遠に見守っているのだ。
秋雨の下で 完
2004・6・26
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