第五十五話 演奏その二
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「あのチームは」
「巨人じゃないからね」
景子もこう美優にあっさりと返す。その阪神の姿で。
「いいのよね」
「巨人だけはな」
「そうそう、好きになれないから」
「あのチームだけはな」
何をどう努力してもだというのだ。
「好きになれないな」
「というか大嫌いよね」
「上に超が三つつく位にな」
大嫌いの上にだ、これは阪神を愛する者の常だ。阪神ファンで巨人を好きな人間はいないと言っていい。
「だから最初から歌わないからな」
「絶対に無理よ」
彩夏もここで言う。
「とてもね」
「だろ?だからな」
それでだというのだ。
「巨人だけは歌わない」
「オリックスもないわよ」
里香もここで言う。
「近鉄と阪急はあるけれど」
「あそこは別にいいだろ」
歌わなくともだというのだ、このチームも。
「別にな」
「近鉄と阪急があるからなのね」
「何かあのチームもな」
どうかとだ、美優は眉を顰めさせて四人にこう話した。。
「変に巨人と仲いいだろ」
「球界再編の時からね」
何と一リーグ制にして東の巨人、西のオリックスとして球界の新たな雄同士になろうとしていたというのだ。若しこれが事実なら巨人共々思い上がりも甚だしい不遜極まる破廉恥な思考であり行動である、それは野球を愛する者全員への汚い裏切りであり背信行為である。
「他のチームを潰したうえでね」
「だからあのチームもいいだろ」
球界の癌であるが故にだというのだ、巨人共々。
「別にな」
「そうね、それじゃあね」
「別にな」
また言う美優だった。
「あそこは」
「そうね、近鉄と阪急を歌うのなら」
里香もそれで頷いた。
「それじゃあ」
「ああ、じゃあな」
「近鉄と阪急を歌って」
その後進であるオリックスはというのだ。
「歌わないってことで」
「それにしてもオリックスってどっちかしらね」
彩夏はここで首を傾げさせてこう言った。
「近鉄かしら、阪急かしら」
「歴史は阪急よ」
里香が彩夏の疑問にこう答える。
「一応ね」
「阪急のはの字もないわよね」
「元々阪急から球団を買ったから」
それで球史はそちらになるというのだ。
「そっちになるのよ」
「そうなのね」
「けれどね、名前はね」
「バファローズだから」
近鉄のものであることは言うまでもない。
「マスコットもそうで応援もね」
「じゃあ近鉄なの?」
「そうなると思うわ、どっちかっていうと」
「球史は関係ないのね」
「それは後からついてくるものだから」
例え球史が阪急のものでもだというのだ。
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