記憶なき者A
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雫の病室である。
中に入ると、そこには変わらない寝顔があった。表情一つ変えず、ナーヴギアを被った少女が。
雪羅は少女の顔をじっと見つめた。
「君は、記憶を亡くした者の気持ちって分かるか?」
その答えは当然のように返ってこない。しかし、雪羅は続けた。
「俺、この二年間の記憶が無くてさ、はじめは何ともなかったんだけどこの間になって急に気になりだしたんだ。おかしな話だよな、眠ってたのに・・・。でも・・・」
雪羅は雫の手に自分の手を添えた。その手は温かく、柔らかかった。
「俺は、知りたい。たとえどんな悲惨な過去だったとしても、俺は知らなきゃいけない気がするんだ。だから・・・もし、記憶が戻ったその時は君に聞かせてあげるよ・・・」
雪羅は眠っている雫と小指を絡めた。
「約束だ。だから早く目覚めてくれ・・・」
すると、雪羅の頬に涙が流れた。
「あれ?おかしいな、何で・・・何で・・・」
雪羅は涙を拭う、しかし涙は止まることなく流れ続ける。
「どうして、こんな・・・こんなことになるんだよ・・・」
雪羅はベッドに顔を埋めた。そして雪羅は声を荒げた。
「何でだよ、何でだよ!教えてくれよ、お前はどうして目を覚まさない?答えろよ、答えてくれよ!!」
しかし、答えは返ってこない。その叫びはただ虚しく部屋の中に響く。
「頼む、目を、開けてくれ・・・」
そして雪羅はある名前を叫んだ。
「エリー!!!」
その名前を叫んだ直後、雪羅の叫びは止まった。
「えっ・・・?」
雪羅自身、何故その名前を叫んだのか分からなかった。
自分が知る限り、そんな名前をした人には会ったことがないはず。なのにふとその名前が頭をよぎった。
「エリー・・・どうして、俺は・・・」
すると今度は激しい頭痛が雪羅を襲う。
「グッ!ぁああああ!!!」
頭の中に映像のようなものが流れてくる。夕陽、小さな丘、森、そして小さなログハウス。そこで暮らす五人の男女。
今度は顔がハッキリと見える。
『今回は、違う・・・?』
そこには、雪羅に似た少年がいた。
『アイツは・・・俺なのか?』
映像が切り替わると、そこには部屋で一人泣く少年が・・・。
『どうして、泣いているんだ・・・』
少年は一つのキューブのようなものを出現させるとその角を押した。すると女の子の声が聞こえた。
『ヤッホー、シオン。これを聞いてるってことは、私はもう死んじゃったわけなんだけども、シオンが寂しくないように、早まって自殺しないようにこれを送ります。』
その声はどこか明るく、そして暖かい声だった。
『まず先に言っとくことは、今までありがとうね。シオンがいなけ
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