記憶なき者A
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あれから二週間が過ぎた。
あれから毎晩のようにあの夢を見るようになり、目覚めると朝になっている。
こんな日々が続くと、気になって流石に寝不足になりそうである。
そんな風に悶々と過ごしていると、部屋の扉から一人入ってきた。
「こんにちは」
入ってきたのは黒髪の少年立った。女の子のような顔が印象的で体も男にしては細かった。
「あの、どちら様ですか?」
「桐ヶ谷 和人。キリトって言えば分かるか?」
俺は首を横に振った。
「そうか、やっぱり記憶喪失って話は本当だったんだな・・・」
「・・・誰からその話を?」
「ちょっと知り合いにな、それより・・・」
「あなたは、何者なんですか?」
「強いて言うなら・・・、お前の過去を知っている人間だ、この二年間のな」
「えっ・・・」
彼が俺の過去を知っている、だと・・・。しかも、この二年間の記憶を・・・。
「どうして、それを・・・」
「お前のお袋さんに頼まれたんだよ」
「母さんに?」
和人は頷いた。
「『息子の記憶を取り戻してくれ』って、正直最初は驚いたよ」
「でも、あなたは来た。俺の記憶を取り戻すために・・・」
「あぁ、俺がお前の空白の二年間を埋めてやる!」
「・・・はい、お願いします!桐ヶ谷さん」
「和人でいいよ、それに俺は君より一つ年下だし・・・」
「そう、なのか?」
こうして俺は和人から過去の俺を知ることとなる───。
〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜・〜
話が終わった時にはもう夕方になっていた。
「これが、俺の知るこの二年間のお前の姿だ」
「俺が、攻略組?白の剣士?そんなバカな・・・」
「・・・大丈夫か?」
「・・・悪い、今日は帰ってくれないか?」
「・・・分かった、また来るよ」
そう言って和人は立ち上がった。帰り際に彼はこう言った。
『焦るなよ』と───。
雪羅はしばらく外の景色を眺めていた。和人の話を整理しながら───。
『攻略組・・・。彼の話は本当なのだろうか・・・』
「はぁ・・・」
季節は冬、年が明けてまだ、間もない。冬の冷たい風が吹き、外を出歩く人は殆んどいない。サラリーマンが急いで家に向かう姿が見てとれる。入院するまではそんな姿気にもとめなかった。しかし、今になって分かる。彼らもまた闘っているのだと。社会と、現実と───。
そして今の自分を含めて、世の中の人々も場所や種類は違えど、闘っているのだと───。そんな風に考えるようになったのは入院してからいつの頃だったか。
雪羅は黙って車椅子に乗り、ある病室へと向かった。
雪宮
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