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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
光があれば闇もある
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ばかりの金属の悲鳴が上がる。
ギリ、ギリ、と新たな乱入者である老人の目の前で、その老人の影から滲むように出現した人影が、少年の短刀を真正面から受け止めていた。
その身長は高い。第一層【トールバーナ】で声を上げた巨漢、エギルとどっこいどっこいかもしれない。しかし、忍装束の上から推測できる体格はかなりの痩身だ。しかし不健康そうだとか、そういう印象は浮かばない。
鼻と鼻がくっつくほどの距離にある眼は、暗く濁ってその心の奥底は全く窺えない。
新たに出現した集団は、数十人規模の集団だった。
そんな集団が、レンと呼ばれた少年の感覚器官に引っ掛からないはずがない。なのに、その集団は声を発するその瞬間まで景色に完璧に溶け込んでいた。
まるで、舞い落ちる落ち葉のように。
まるで、梢を走り回る子鼠のように。
まるで、風にそよぐ雑草達のように。
《
隠蔽
(
ハイディング
)
》スキルで隠れていたとか、そんな次元ではない。例え動いていたとしても意識レベルで気にする事を止めているような、対象の意識の死角にするりと入り込んでくるかのような、そんな人外の成せる技。
それを数十人で一斉にやってのける、そんな集団の前に立っているのは、腰の折れた一人の老人だった。飾り気のない地味な紺色の着物を羽織り、腰には幾本幾種類もの刀剣が据えられている。何より特徴的なのは、折れたその背にドでかい中華鍋を背負っていることだ。それが相まって、ひょろりとしているのに全体的に太った亀のように見えてしまう。
六王第四席《老僧の千手》シゲクニ。
その姿を視認し、レンは己が得物を受け止めるギルド【風魔忍軍】のメンバー越しに睨みつける。
「六王サマが僕に何のご用かなァ?」
「…………下がれハンゾウ。もうよい」
は、と。
シゲクニの言葉とともに、ハンゾウと呼ばれたプレイヤーが自らの得物を納めた。
って、おい、ちょっと待て。
ハンゾウだと?
すすす、と集団の中に溶け込むように消えたハンゾウに代わり、シゲクニは笑みを浮かべる。
「決まっているじゃろう。儂らは君を止めに来たんじゃよ」
「……ハッ。何かと思えばそんなこと」
鼻を鳴らし、《冥王》と呼ばれる少年は虚ろな笑みを浮かべた。
「それなら余計なお世話だと言っとこうかな。僕は止まる気なんてサラサラないし、それに――――」
チロリ、と少年は目の前にいる老人に視線を向ける。並の人間ならば、それだけで生命活動が危ぶまれるという都市伝説まであるほどのものを。
「本当に止めたいんなら、殺意くらいしまいなよ」
その言葉とほぼ同時。
少年と老人と集団がいる、そびえ立つ岩々に囲まれてできた空間。その岩の上に、じわりと滲み出す影があった。
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