暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
OVA
〜慟哭と隔絶の狂想曲〜
光があれば闇もある
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く。

それはヒトだった。



ただし、四肢全てと顎底部を丸ごと切断されたヒトだ。



アゴを切除されているためか、先ほどから必死に何かを言おうとしてはいるものの、ただの雑音として周囲に振り撒かれていた。手足を全て寸断されているために、自らの意思での移動も、ポーションやクリスタルなどによる回復もままならない。

合計五つもの部位欠損ダメージによって、視界の隅に浮かぶHPバーは恐ろしいほどの赤に染まり、ソレは声もなく涙を流していた。大粒の液体が鮮血に彩られた頬を伝い、地面に大きなシミを黒々と作り出す。

ソレを少年はただただ一瞥し、ぽつりと呟く。

「うるさいな」

ゴシュッ!

闇に染まりつつある空気の中に、鈍い音が響き渡る。その音に驚いたかのように、今にもまどろまんとしていた小鳥達が数羽、驚いて飛び立つが、少年は気にしなかった。

ゴキッ!

ゴキャッ!

ゴシャッ!

複数の音の後、ばしゃああぁぁっっ!というポリゴンの破砕する効果音が響いた。

「………………………」

少年は黙って、ソレの頭部を砕かんばかりに踏みつけていた足を下ろした。

先程まで《ヒト》がいた地面には、もうその存在がいたという痕跡は跡形もなく消えていた。まるで、先程までの光景が夢のような悪夢であったかのように。

狂いきって、狂いすぎて、狂い終わった少年は、ゆっくりと視線の焦点を合わせて自分の手元を見る。

そこには、通常ではありえないようなブラッディーレッドのウインドウが出現していた。

そこに記されているのは、これまで彼が殺した人々の名前。そのウインドウの隣に、小さな枠で今殺した男の顔が胸から上の(バストアップ)写真が浮かび上がり、それが小さくなって名前の群の一番下に組み込まれる。

これで完了。

こんな、ささやかな現象がこの少年を突き動かしているものだ。

血色のウインドウの上端には、【You killed 145】とそっけなく記されている。

「あと五十()人…………か」

ふぅ、と息を吐き出す。

高ぶっていた精神が、離れかけていた心が、トびそうになっていた理性が戻ってくる。

世界の色が戻り、空気に鉄以外の匂いが漂い始める。

ゆるりと体中の力を抜いた途端、膝が冗談のように震えだし、血色のコートを着た少年は堪らずに地に手のひらを付けた。

自然と息が荒いものとなり、宵闇の大気を白く染め上げる。

うずくまり、ぜぇぜぇと荒い息を繰り返す少年に、唐突に声を掛ける者()がいた。

「お疲れのようじゃな。レン君」

バォッッ!!

大気が悲鳴を上げる。

反応する、という行為自体が許されないほどの一瞬の間隙の後、耳をつんざかん
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