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錬金の勇者
8『竜使いの少女』
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人しかいないと言われている希少なスキルの総称だ。明らかになっているのは、攻略組最強、つまりはSAO最強と言われているギルド、《血盟騎士団》団長のヒースクリフという男の持つ《神聖剣》。もちろん、シリカは実物を目にしたことは無い。

「まぁ、攻略組は大半が知ってるんだけどな。このスキル。あんまり中層プレイヤーの人たちには見せたくないんだ……結構問題があってな……」
「ああ……何か分かります」

 シリカも、ピナをテイミングしたばかりの頃は憧れや賞賛の言葉だけでなく、恨みや妬みの言葉なども随分かけられた。きっと最前線プレイヤーも大変なんだろう。

「とりあえず、この武器があれば5〜6レベルは上乗せできるだろう。特にダガーはこの先でも使える性能にしてある。俺も付いていくから、何とかなると思うよ」
「あの……何でそんな親切にしてくれるんですか?」

 思わず聞いてしまった。SAOでは《甘い話には裏がある》のが定石だ。彼もそれを感じ取ったのだろう。数瞬ほど迷ったようなそぶりを見せてから、小さくつぶやいた。

「……から」
「え……?」
「君が、その……姉に似てるから」
「お姉さん、ですか……?」

 シリカはどう見ても彼より年下だ。下手をすれば五歳以上離れているかもしれない。妹ならばわかるが、なぜ姉などと……。

「ああ。義姉なんだが……さっきの君みたいな表情を、昔彼女がしたことがあってな……どうしても放っておけなかった。わ、笑うなよ。シスコンじゃないぞ。断じて違うからな!」

 どうやらシリカは笑ってしまっていたらしい。男は今までの冷厳な気配を崩れさせて狼狽した。

「ありがとうございます。あの……こんなのじゃ、全然足りないと思うんですけど……」
 
 シリカは全財産をトレードウィンドウにのせる。すると、男は首を振って、

「いや、いいよ。もともと今のインゴットは余っていたものなんだ。ウィンドウに寝かせておいてもどうにかなるモノではないしな……」

 男はトレードウィンドウを消去してしまう。

「すみません。何から何まで……あの、あたし、シリカって言います」
「俺はヘルメス。よろしく」

 
 《錬金術師》と《竜使い》の少女との出会いだった。
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