8『竜使いの少女』
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来、シリカとピナは順調に経験値を積み、中層プレイヤーの中では結構レベルの高いプレイヤーになっていた。主ボリュームゾーンを形成する中層プレイヤーの中で有名になることは、アインクラッドのアイドルプレイヤーの仲間入りをすることである。その事実に、少し舞い上がっていたのかもしれない。
きっかけは、些細な公論だった。所属していたパーティーが、《迷いの森》から帰還しようとしたところで、パーティーメンバーの一人がこんなことを言ったのだ。
――――今日のアイテム分配だけどさ。あんたはそのトカゲが回復してくれるんだから、結晶アイテムはいらないわよね。
あざけるような言い方も気に入らなかったが、何よりピナをただのトカゲ呼ばわりしたことが気に入らなかった。
――――そっちこそ後衛でうろちょろしてるだけで大したダメージを負ってないじゃないですか。回復結晶ならあなたもいらないでしょう?
そこから先は売り言葉に買い言葉で、パーティーリーダーの制止も聞かずに、シリカはそのパーティーを飛び出してきてしまった。
直後に公開することになる。《迷いの森》のダンジョンは、一定時間が経過するごとにエリアごとのつなぎ目が変更されてしまう。本来なら必要な地図は、パーティーリーダーしか持っていなかった。それでも何とかして脱出しようと、何度もエリア転移を繰り返していた時。
突然、ピナが警告音を発した。視界に表示されるレッドカーソル。出現したのは、《ドランクエイプ》と言う名の大柄な猿型モンスターだった。このダンジョンに出現するモンスターとしては最強クラスの強さだったが、中層プレイヤーはそれこそ最前線の《攻略組》よりも安全マージンの確保に敏感である。そのため、シリカのレベルなら難なく倒せるはず――――だった。
シリカは知らなかった。ドランクエイプに厄介な特殊能力があることを。以前戦った時はパーティーで戦い、しかもものの数分で殲滅してしまったために《ソレ》を見る機会がなかったのだ。
ドランクエイプは、持っているひょうたん状の壺から、HPを回復させるアイテムを取り出すのだ。御世辞にもおいしくなさそうなそのアイテムを食べるたびに、ドランクエイプのHPは見る見るうちに回復していく。しかも、出現した個体は三体。一体が傷つくともう一体が、その個体が傷つくとさらにもう一体が、それが大ダメージを負うころには、最初の一体が完全回復しているという、最悪の布陣だった。
消耗させられていったのはシリカの方だった。HPがいつしか注意域へと入り、死を覚悟したその時――――ピナが、ドランクエイプの攻撃からシリカを守ったのだ。
使い魔モンスターのHPは貧弱だ。ピナはドランクエイプの攻撃を受けて、「きゅるる……」という悲しげな鳴き声を残
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