第四章
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きた。
ならばハウエルを封じなくてはならない、彼には都合のいいことに一つの弱点があった。
それは彼が左打者というところにあった。そう、彼は左投手を苦手としていたのだ。
「うちの左といえば」
ワンポイントで使えるとなればやはり杉山だ。しかし。
「広沢と池山がいるしな」
その後には古田敦也もいる。森は彼には妙に警戒心を抱いていた。
「古田もいるしな」
確かに古田は打撃もいい。しかしそれだけではないと感じていた。
「もしかするとあの男は」
古田を見る度に思うことがあった。
「私以上の男かもな。野村さんも凄い男を育てているものだ」
後に野村も森も古田に一敗地にまみれる。その時にそう思ったことを噛み締めるのであった。
ヤクルトの打線はそうした強さがあった。だがそれを何処かで断ち切らなくてはならない。
「それは敵の主砲であるべきだ」
そうでなくては意味がないのだ。
「主砲の一発で全てが変わる」
かっての巨人がそうであった。王と長嶋がいたことはやはり重要であった。
昭和四七年のシリーズはその好例であった。第三戦、阪急のマウンドにいたのはサブマリン投手山田久志であった。
山田はこの試合好投を続け九回まで巨人打線を完封に抑えていた。だが九回に王の逆転サヨナラスリーランを浴びてしまった。
これでシリーズの流れは変わった。巨人は勢いを掴みシリーズを制覇したのであった。
「あれがシリーズの怖さだ」
森はそのことがよくわかっていた。シリーズは一打で流れが変わるものなのだ。
だからこそ万全を期さなくてはならない。そう、ハウエルは何としても抑えなくてはならなかったのだ。
その為に秘策がこれであった。おあつらえ向きに近鉄のクリーンアップには左打者がいた。
ブライアントだ。まずは彼を仮想のハウエルに見た。
「さて、ここからだ」
森はヤクルトの偵察陣に目をやった。
「これを見てどうするかな」
彼はあえて手を見せたのだ。これでヤクルト側を少しでも惑わせる為に。
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