番外中編
蒼空のキセキ2
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人は、こんなにも……
「でへへぇっ……」
「おーい、ソラー。乙女が出していい声と晒していい顔じゃないわよー」
「ふぁっ!? あっ、なしなし今のはエヌジーでっ!」
「ふふっ、あーあ、映像結晶でも出しとけばよかったなー」
リズにからかわれて、顔が赤くなるのを感じる。それを見て、リズが笑う。その笑みは、嬉しそうだった。私が幸せそうなのを見て、自分も幸せ。そんな感じの優しい笑顔。「あんたの伝えたいことは、ちゃんと伝わってるわよ」と言ってくれるような、柔らかな微笑。
伝わってるんだね。
でも、まだまだ私は言い続けるんだよ。
―――じきに消えてしまう、この声が出続ける限り。
◆
儚くて、今にも消えてしまいそうなヒロイン。
私はそれが嫌いだった。
その理由を伝えるのに、説明なんて一言で十分。
―――実際になってみればいい。
私は……現実の私は、自分で言うのもなんだけど……いや、自分で言ってしまっても構わないと思えてしまうくらいに、「悲劇のヒロイン」だった。それはもうものの見事に、御伽噺だってきょうびここまで露骨ではないぞ、ってくらいに。
階段の上り下りすら制限される心臓。
満足に腕を振って走ることさえできない手足。
栄養制限の病院食のせいで、白くて痩せっぽちの体。
生まれつきの病気のせいで十年以上病院住まいなんて、同じ年の人たちには想像だってできないだろう。私には同じ年の「普通の人たち」がどんな暮らしをするのかが想像できないように。そんな「普通」を奪われたのが、私だった。
体の自由の無かった私は、心の自由を求めた。
何冊もの物語を読み、何本もの映画を見て、何個ものゲームをした。
幾人ものヒーローを、ヒロインを見てきた。
―――私も、なりたいな。こんな人たちに。
叶うかどうかも分からない願い。常識では叶うはずがないのだろう。事実、その想いが届かず、この世を去っていく人たちを、私は病院という場所でいくつも見届けてきた。私だって、みんなと同じようになるのかもしれないと、おびえていた。
でも、それでも、私は願うのをやめなかった。
もしその願いが叶ったらどうするか。どんな人が迎えに来てくれるのか。どんな魔法が私を助けてくれるのか。どんな世界が私を受け入れてくれるのか。どんな冒険が私を待ってくれているのか。そんなことを、何回も、何十回も、何百回も繰り返した。
そして、この『アインクラッド』という世界で、それは現実となった。
想像もつかないほどの幸運で、私の願いは、叶ったのだ。
自由に動く四肢。
走っても息の切れない心臓。
心の踊る冒険。
最高だと胸を張って言える、仲間たち。
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