第二章
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何てこった」
西武ベンチはいささか落胆した。これで決まったと思ったから当然であった。
「けれどあと一球だ」
森は彼等を宥めるようにして言った。
「それで全てが決まる。ここは落ち着くべきだ」
「そうですね」
ナインもこれで鎮まった。そして渡辺に顔を戻した。
「頼むぞ」
だが渡辺はボールの判定に完全に調子を崩していた。
「あれがボールになるか」
彼はまだ納得できないでいた。
野球においてピッチャーはとりわけ特殊なポジションである。野球はまずピッチャーからだ、と言われる程重要だ。
繊細なものである。ちょっとした心の動きが投球に影響するものだ。
この時の渡辺もそうであった。彼はそれまでの勝利を確信した顔ではなかった。
「落ち着け」
だがそこにキャッチャーの伊東がやって来た。
「あと一球じゃないか」
「はい」
だが彼はまだ気落ちしていた。伊東はそんな彼を元気付ける為に言った。
「三塁側を見るんだ」
渡辺は言われるまま三塁側を見た。
「あと一球!」
所沢から駆けつけた青い半被のファン達が声援を送っていたのだ。
「見たな」
「はい」
渡辺は頷いた。
「お客さんが待っている。だからここは気を鎮めるんだ」
「わかりました」
渡辺は伊東のそうした細かい心配りを受け取った。
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