As 01 「不吉な予感」
[6/8]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
で苦労しているらしい。
のほほんとしている現在のファラに、今は何を言っても効果がない気がする。帰ったらシュテルにファラで遊ばないように言っておかなければ。
シュテルにひらりとかわされないようにするための対策を考えているうちに、いつの間にか待ち合わせ場所の近くまで来ていた。呼吸を整えながら歩いていくと、私服姿のテスタロッサがすでに待っていた。
「……あっ」
「悪い。待たせたか?」
「ううん。私も今来たところだから」
素直に納得すればいいのだろうが、テスタロッサの性格を考えるとかなり前から待っていてもおかしくない。アルフに聞いてみようと思い、リードに沿って視線を移す。目に飛び込んできたのは、アルフと同じ毛並みをした子犬だった。
俺の記憶にあるアルフは、狼か人の姿をしていた。地球という環境に合わせて小さくなっているだけなのだろうが、違うのではないかという不安を消すことができない。八神家のあいつを見慣れてしまったことが理由かもしれない。
「……アルフだよな?」
「そうだよ」
「……そっか。安心した」
間があったことに追求されるかもしれないと思った俺は、アルフの頭を撫でることで彼女にその暇を与えなかった。嫌がられるかと思ったが、撫でられるのは嫌いじゃないのかされるがままになっている。とはいえアルフの性格を考えると、あまりすると噛み付かれるかもしれない。
返事を返す間に考えてた余計なことを言っても噛み付かれるだろうな。でも考えるのは仕方がないはずだ。姿はまだしも、声まで幼くなってるとは思っていなかったのだから。
「ところでアルフ」
「ん?」
「実際のところ、どれくらい待ってた?」
「うーんとね、フェイトの言うとおりそんなに待ってないよ。家ではそわそわしてたけど」
「ちょっアルフ!? ショウも何でそういうこと聞くの!?」
「何でって、寒空の下に長時間待たせたとしたら申し訳ないから」
「え、あっ、心配してくれてありがとう。じゃなくて……その、そういうのもアルフにじゃなくて私に聞いてほしい。誤魔化したりしないから」
あまりにもあたふたしているテスタロッサは、戦闘の時の凛とした彼女とはかけ離れすぎている。そんなことを思っていると、アルフが今日のテスタロッサは積極的だと茶化す。彼女の顔が真っ赤になったのは言うまでもない。
テスタロッサって普段と戦闘中じゃずいぶんとギャップのある子だな。……いや、今のテスタロッサが本当の彼女なのだろう。彼女は前に本当の自分を始めると言っていた。事件が終わってからの約半年で彼女は、過去の自分をきちんと終わらせて本当の自分を始めたのだろう。
彼女が変わろうと決めた時期と、俺が変わりたいと決意した時期はほぼ同じ。それなのに俺は全くといっていいほど何も変わっていない。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ