As 01 「不吉な予感」
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闘力を得られるため一石二鳥だと言える。
「……ん?」
目的地に走り始めた直後、胸にあるポケットの付近がもぞもぞ動いた。視線を向けるのと同時に、ファラの頭部がひょこっと出る。頭を振って邪魔な髪の毛を退けると、彼女はこちらに顔を向けた。
「ふぅ……落ち着く〜」
できるだけ揺らさないように心がけているが、多少なりとも揺れている。俺にとってそうでもない揺れも、人形と変わらないサイズのファラにはかなりの揺れのはずだ。
「なあファラ」
「なに?」
「俺が思うに、普通は落ち着かないと思うんだが?」
これまでならば、こういうときファラはむすっとした顔を浮かべていた。だが今日は、先ほどから浮かべている脱力状態の笑みのまま。力の抜けた声で、彼女は返事を返してきた。
「マスターは分かってないな〜。狭い場所って落ち着くんだよ〜」
「……お前がポケット以外の狭い場所にいるの、ほとんど見たことがないんだが?」
「人間が変わっていくように、デバイスも変わっていくんだよ」
「そうか」
「うん……私、そのうち対人恐怖症になるんじゃないかって最近思うようになったし」
ファラの言葉に動揺し、後ろ足を踏み出す際に前足に引っ掛けてしまった。即座にファラの頭を押さえる。こけそうになりながらも、軽く引っ掛けただけだったため踏ん張ることができ、バランスを戻すのに成功した。
「悪いファラ」
「うーん、別にいいよ〜」
これまでならば「ちゃんと走ってよ!」と怒声を浴びせられていたのに、今日のファラは全く怒っていない。仏のように優しい笑みを浮かべていると言っていい……先ほどまでと変わっていないとも言えるが。
「本当に大丈夫か?」
「だいじょうぶ、だいじょうぶ」
どう考えても大丈夫ではない。ファラがこうなった原因は十中八九、同居人のシュテルのせいだろう。叔母がいない現在、俺以外にファラと接している人間は彼女くらいしかいないのだから。
シュテルが来たばかりの頃はまだしも、今のふたりはの大分仲良くなっているように感じる。一緒にテレビを見ているし、シュテルはファラのために衣服も作っているのだから。
――でも待てよ。無言の圧力を放つシュテルにどんどん着せ替えを迫られ、げんなりしているファラを見たことがあるような……。テレビの展開を聞いたりすると、彼女の意見が結果的にネタバレだったってことが何度もあったような……。
「……ファラ」
「ん?」
「もっとお前のこと気にかけるよ」
「おぉ〜……嬉しいけど、無理しないでいいよ。マスターにはマスターのしたいことをしてほしいから。それに、今みたいな何気ない時間が幸せなんだって感じるようになったし」
ここまで言わせてしまうあたり、俺が予想したよりもファラはシュテル
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