第六章
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た。延長十回、遂に時間切れ引き分けとなった。
「こんな終わり方あるかい・・・・・・」
「これで優勝せんなんて嘘やろ・・・・・・」
観客達もテレビを観ていた者も全て落胆した。誰もが望んでいない最悪の結末であった。
「残念な幕切れとなりましたね・・・・・・」
久米は首を横に振ってこう言った。
「折角ここまで来たのに」
彼は明らかに近鉄を応援していた。普段から公平性を著しく欠く報道をしてきたが今回は特にそれが顕著であった。だが今それを咎める者は誰もいなかった。誰もが彼と同じ考えだったからだ。
「優勝か」
「そうだな」
テレビを切った西武ナインは口々にそう言った。そしてグラウンドに出た。
森が胴上げされる。だが誰もいない、ナインだけでの胴上げだった。
「日本一になろうな。さもないとあいつ等に悪い」
誰かがこう言った。
「そうだな、絶対に」
彼等は口々にこう言った。そしてシリーズに備えた。
その時近鉄ナインは空しく川崎を後にした。誰もが口を固く閉ざしている。
「また来年・・・・・・」
それを見る記者の一人がそう言おうとした。だが言えなかった。彼はそこまで無神経ではなかった。
無念、その言葉が球場を支配していた。ロッテナインも何も語らずその場をあとにした。
だがその無念は死んではいなかった。少なくとも近鉄ナインの心には。
「何時か必ず・・・・・・」
「俺達はやってやる・・・・・・」
誰もがそう思っていた。そして彼等は次なる戦場へ向かう心構えをしたのであった。
無慈悲な時の流れ 完
2004・6・30
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